2020 Fiscal Year Research-status Report
ウィリアム・ジェイムズの多元論哲学に対するシャルル・ルヌヴィエの影響に関する研究
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20K12800
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Research Institution | Maizuru National College of Technology |
Principal Investigator |
山根 秀介 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (30795456)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ウィリアム・ジェイムズ / シャルル・ルヌヴィエ / 多元論哲学 / ジャン・ヴァール / フランシス・ハーバート・ブラッドリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ウィリアム・ジェイムズの多元論哲学を、シャルル・ルヌヴィエの哲学と比較することによってより一層深く理解することである。両者の影響関係は多岐にわたるため、2020年度は「多元的存在論」というテーマに焦点を当てて研究を行った。「有限性」を中軸とするルヌヴィエの存在論――世界に無限のものはなく、大小程度の差はあれ限界を備えた有限者しか存在しないからこそ、世界は多なる個物から形成されているとする立場――は、ジェイムズの存在論にほぼそのままの形で継承された。そしてもう一つの柱である「外的関係」の概念はフランシス・ハーバート・ブラッドリーを批判的に検討するなかで彫琢されたものであるが、この二つの影響によってジェイムズの存在論は多元論として一つの体系性を備えたものとなった。こうした考察をまとめた論考が、今年度中に刊行予定の、一元論の歴史をテーマとする論集に収録される。
また、未邦訳のジャン・ヴァール『英米多元論哲学』を全体の半分程度訳出した。本書は19世紀から20世紀にかけての英米の多元論哲学の動向を詳細かつ浩瀚に調査し、ウィリアム・ジェイムズをその頂点と捉えた、いまだ類書をもたない著作である。日本語文献ではまったくと言っていいほど知ることができない情報が膨大に組み込まれた本書を邦訳する意義は非常に大きいと言えるだろうし、また翻訳する過程でこれまでほとんど知られてこなかった哲学者や思潮を調査することは、ウィリアム・ジェイムズを「西洋哲学における多元論」の系譜(ルヌヴィエもここに含まれる)に載せて考える上でも意味をもつ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
勤務校における新型コロナウイルス感染防止対応のために非常に業務量が増えて多忙となり、ジェイムズとルヌヴィエの書簡を十分に検討する時間を取ることができなかった。 また国内だけではなく海外への出張をすることができなくなったため、アメリカやフランスでの現地調査や研究発表、研究者との意見交換を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
おそらく2021年度も海外への渡航が制限される状況が続くと予想されるため、ルヌヴィエの著作を丹念に読解することに時間をかけたい。これまで国内で彼の著書を詳細に解釈するような研究は存在していない。またリモートで開催される国際学会があればそこで発表を行って海外の研究者と議論をする。 本研究は2021年度までの2年間の計画であったが、可能であればこれを2022年度まで延長し、実際に米仏に渡航して現地調査を行いたいとも考えている。
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Causes of Carryover |
国内外への学会のための出張、特にアメリカ及びフランスへの出張が新型コロナウイルスの影響でできなくなったため、大幅な次年度使用額が生じた。 2021年度は必要書籍を買い足しつつ、渡航制限が解除される可能性のある2022年度に出張費を持ち越したいと考えている。
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Research Products
(1 results)