2021 Fiscal Year Research-status Report
ウィリアム・ジェイムズの多元論哲学に対するシャルル・ルヌヴィエの影響に関する研究
Project/Area Number |
20K12800
|
Research Institution | Maizuru National College of Technology |
Principal Investigator |
山根 秀介 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30795456)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ウィリアム・ジェイムズ / シャルル・ルヌヴィエ / 多元論哲学 / 多神教 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ウィリアム・ジェイムズの多元論哲学を、シャルル・ルヌヴィエの哲学と比較することによってより一層深く理解することである。2020年度の研究を通して申請者のルヌヴィエ哲学理解がいまだ不十分であることが明らかとなったため、本年度は特にルヌヴィエの宗教哲学に焦点を当てて研究を行った。 具体的には、彼の最晩年の著作である『人格主義』を読解することによって、またそれを主著『一般的批判』の『第一試論 一般論理学及び形式論理学概論』において展開された表象主義と突き合わせることによって、彼の神概念がいかなるものであるかを明らかにしようとした。彼の神は、意識と意志を備えた人格的存在であり創造主である神、そして人間の知覚によって直接的に認識されることはないが、時間的、空間的存在者とその変容を認識する能力を備えた神である。これはジェイムズの「有限の神々」という神観と深く響き合うものであり、多神教的な宗教哲学の道を開くものである。この成果は2022年3月の宗教哲学会で発表したものであり、これから論文として書き直し投稿する予定である。 とは言えもちろん、これによってルヌヴィエの宗教哲学を汲み尽くせたわけではない。彼の体系において、宗教は悪、道徳、目的といった人間の実践的な側面と強く結びつくものであるが、それを可能にする「自由意志」については、まだほとんど理解できていない。『第二試論』を詳細に検討することによって、それが2021年度に明らかにした神観念とどのような関係を取り結んで一つの宗教哲学を形成するのかを考察する必要がある。また『人格主義』でもしばしば援用されるライプニッツのモナドロジーとの関係も重要な検討事項である。積み残した問題は多い。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続き、勤務校における新型コロナウイルス感染防止対応のために業務量が増えて多忙の状態が続き、十分に研究時間を取ることができなかった。 また国内だけではなく海外への出張をすることができなかったため、アメリカやフランスでの現地調査や研究発表、研究者との意見交換を行うことができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度後半には海外への渡航制限が緩和されると予想されるため、当初の計画にしたがい、アメリカやフランスでジェイムズとルヌヴィエの研究発表を行い、現地の研究者と交流してさらに研究を進めたい。 もしそれがかなわなければ、引き続きルヌヴィエの著作を丹念に読解することに時間をかけたい。またリモートで開催される国際学会があればそこで発表を行って海外の研究者と議論をする。
|
Causes of Carryover |
令和2年度と3年度にアメリカ及びフランスへの渡航を予定したが、それがコロナ禍により不可能となったために金額が余った。4年度は渡航が可能であれば実施し、不可能であれば執行計画を大きく変更し、書籍の購入費や国内会議の実施費用に当てたい。
|
Research Products
(2 results)