2022 Fiscal Year Annual Research Report
南北朝時代から隋代への礼学の変遷―礼学と実用のあいだ―
Project/Area Number |
20K12804
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 恭哉 京都大学, 文学研究科, 准教授 (50709235)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 五礼 / 熊安生 / 顔之推『顔氏家訓』兄弟篇 / 常徳志「兄弟論」 / 兄弟観 / 王通『中説』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績としては、まず「熊安生傳」(『京都大学文学部研究紀要』62号)の執筆がある。本稿では、これまで北朝経学を代表し、かつ隋を経て唐代の『五経正義』に経説が多分に取り入れられながら、その経学の営みの実態が判然としなかった熊安生を対象にした。具体的には、彼が如何なる過程で自己の学問を形成し、どのような学術活動を展開し、さらにその学問がどう後世に継承されたかを、正史の既述を基本としながら、様々な史料を博捜して、総体的に整理・議論した。とりわけ本研究の主要課題である五礼について、熊安生がそれに精通した学者と同時代に認知され、その編纂にも携わっていた様子を明らかにすることに成功したのは、本研究の成果の第一に推すべきである。 また前年度から着手し、実績を挙げてきた南北朝時代の兄弟と礼学をめぐる研究についても、進展があった。これまで顔之推『顔氏家訓』の兄弟篇と類似した性格を持つとされながら、あまり読解されてはこなかった隋・常徳志「兄弟論」について、精読した結果を「常徳志「兄弟論」訳注(上)」(『香川大学国文研究』47号)として公表したのである。本訳注の作成に際しては、口頭発表「隋・常徳志「兄弟論」の訳注を作成して」(第10回アジア史連絡会)も行った。今後は同下篇も著すことで、それを基礎にして、南北朝時代から隋にかけての兄弟観が当時の礼学の議論とどう関わったのかを、多くの史料に目を配りつつ、検討していくことにしたい。 最後に隋・王通『中説』の訳注の連載も順調に進んでおり、本年度は「王通『中説』訳注稿(九)」(『香川大学教育学部研究報告』第8号)を公表した。
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