2020 Fiscal Year Research-status Report
インド密教における出家修行者の生活規範と社会的ステータスの研究
Project/Area Number |
20K12807
|
Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
横山 裕明 大正大学, 綜合仏教研究所, 主任 (20794043)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 底哩三昧耶経 / 底哩三昧耶成就法 / サンスクリット写本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究1年目にあたる2020年度は『底哩三昧耶成就法』の読解に注力した。この文献は本研究課題において出家修行者の生活規範を探る上での出発点として定めた『底哩三昧耶王経』に基づいて書かれた成就法である。『底哩三昧耶王経』には当時の出家修行者の生活規範を示す文章がいくつかの章に分かれて説かれているが、サンスクリット写本および漢訳が存在しないことから研究はチベット語訳に頼らざるを得ない。そのためサンスクリットおよび2種のチベット語訳が存在する『底哩三昧耶成就法』の校訂テクストと訳註を作成して、『底哩三昧耶王経』を研究する上での土台を構築した。この研究成果については、まず全体の三分の一にあたる分量(「§1. 帰敬・吉祥偈」から「§14. 守護尊たちの布置」まで)の校訂テクストと訳註を『豊山学報』第64号に掲載すべく論文を投稿して現在校正待ちの状態である。『底哩三昧耶成就法』全体の校訂テクストと訳註は本研究期間内に順次公表していく。 なお、新型コロナウイルス感染症の影響により当初計画していた出張が叶わず、近隣の大学図書館などもコロナにより利用が制限されていたため、関連写本や書籍類は十分に入手できなかった。さらに、大学院生を雇用したデータ入力補助作業も実行できなかった。これらのことから『底哩三昧耶王経』本文への着手は遅れているが、その代わりに『底哩三昧耶成就法』に基づく他文献との比較研究に注力しており、目標到達に向けて着実に研究を進めている。『底哩三昧耶成就法』の研究が進んだことにより『底哩三昧耶王経』の理解も捗っており、今後は深く掘り下げるべき章と内容を改めて選定し直したい。最終的な研究成果の獲得に必要な基礎部分がこの1年間で無事に完成したといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により当初計画していた出張が叶わず、近隣の大学図書館などもコロナにより利用が制限されていたため、関連写本や書籍類は十分に入手できなかった。さらに、大学院生を雇用したデータ入力補助作業も実行できなかった。これらのことから研究計画については「研究実績の概要」に示した通り若干の変更を余儀なくされたが、既に入手していた各種資料に注力することで目標到達に向けて順調に研究を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は『底哩三昧耶王経』本文の本格的な読解に取り組む。1年目に作成した『底哩三昧耶成就法』のサンスクリット・チベット語校訂テクストと訳註に基づいて、『底哩三昧耶王経』のチベット写本・版本の示す各読みを深く掘り下げていきたい。また、関連文献を収集して内容比較をおこなうことで本研究課題のメインテーマである当時の出家修行者の生活規範について明らかにしていきたい。
|