2022 Fiscal Year Annual Research Report
インド密教における出家修行者の生活規範と社会的ステータスの研究
Project/Area Number |
20K12807
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
横山 裕明 大正大学, 綜合仏教研究所, 主任 (20794043)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 底哩三昧耶王系経軌 / 日常的実践 / Trisamaya / 日常勤行法則 / 胎蔵大日如来真言 / 密教行者 / 出家修行者 / 大日経 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究最終年(3年目)にあたる2022年度は、これまでに構築した『底哩三昧耶王経』に関する研究土台に基づいて『底哩三昧耶王成就法』全体の校訂テクストと和訳の公表を完遂させた。この研究成果は『豊山学報 第66号』に投稿している。この研究意義は『底哩三昧耶王成就法』の解明という面だけではなく、底哩三昧耶王系経軌と真言宗の所依経典である『大日経』との関係がさらに鮮明になった点にもある。すなわち、研究課題の核心部分にあたる出家修行者の生活規範と社会的ステータスを複数の文献を通して俯瞰的に観察することで各主張を裏付けることができた。特に『底哩三昧耶王成就法』の後半部分に説かれる修行者の生活や日常的な実践について、文献を通じて具体的に触れることができたのは大きな研究成果といえる。 また、これまでの研究では出典が不明瞭であった真言宗の本尊・胎蔵大日如来の真言(アビラウンキャン)について、影響関係がほぼ確実視できるマントラ(三世平等性心呪)を『底哩三昧耶王経』より抽出し、関連文献の写本・版本との比較から本来の形などについて考察を試みた。その結果、既存の研究とは異なる様々な可能性を導き出すことに成功した。なお、これに類似するマントラは後期密教文献の『グフヤサマージャタントラ』や『クリシュナヤマーリタントラ』にも説かれていることが分かっており、同様のマントラがいかに展開していったかを明らかにするための基礎研究の側面も併せ持つ研究成果になったといえる。さらに、『底哩三昧耶王成就法』に説かれる全31のマントラについて、説示される箇所・マントラの名称・文句・本経における位置・関連儀軌における位置を整理して一覧表を公表した。この一覧表は今後の底哩三昧耶王系経軌研究における有用な基礎資料となるであろう。
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