2021 Fiscal Year Research-status Report
中世から近世への転換期に作成された牛頭天王信仰に関するテキストの総合的調査と研究
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20K12813
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
鈴木 耕太郎 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (90824863)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 牛頭天王 / スサノヲノミコト / 行疫神 / 除疫神 / 縁起 / 陰陽道 / 『簠簋内伝』 / 『牛頭天王暦神辨』 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も引き続き新型コロナウイルス感染症の蔓延によって大幅に研究計画を見直す必要性に迫られた。具体的には各地の文献資料調査を厳選させ、①滋賀県栗東市の大宝神社所蔵牛頭天王縁起の調査、②奈良県春日大社の牛頭天王曼荼羅の閲覧と実地調査の2点に集約させた。前者①については、これまで見たことのない話型の縁起であったため、近世牛頭天王信仰を考える上で非常に重要になっていくものと考える(予備調査を重ねて、今後、論考化に動きたい)。②は従前よりその存在は知っていたものの、改めて旧大和国の牛頭天王信仰には春日大社(さらにいえば、その末社である水谷社)が強く影響していることが、その他資料を通じて明らかになってきた。また、奈良県内には縁起を所有する旧牛頭天王社が多くあるとの情報も実地調査を通じて得たため、2022年度に具体的な実地調査を行う予定としている。 具体的な研究実績でいえば、論考が1本、学会発表が1本、研究会発表が2本、学外学術講演会が1本となる。そのうち論文については、従来の自身の研究成果をもとに、陰陽道のなかでの牛頭天王信仰をどう位置づけるか、これまで正面から論じられてこなかった課題について切り込むことができた(下記参照)。学会発表では、疫神/防疫神・除疫神としての牛頭天王に改めて着目し、これまで知られてこなかった資料も含めて口頭で発表をした(下記参照)。
論考:鈴木耕太郎「陰陽道における牛頭天王信仰――暦注書『簠簋内伝』巻一の読解を中心に―― 」(『現代思想』 49(5) 、2021年)。 学会発表:鈴木耕太郎「行疫神・牛頭天王 再考」仏教文学会5月例会、2021年5月(於:オンデマンド)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はそもそも日本各地の牛頭天王信仰にかかわる文献や資料について、各地に残るものを調査することが大きな目的である。しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、緊急事態宣言ならびにまん延防止等重点措置が発令される期間が長く、職場の規定等に従うことで十分な実地調査ができなかったことは否めない。2020年度・2021年度と上記のような状況が続いており、2022年度の現在においても未だ感染症の危険性は高い状況にある。 そのため、本研究も多くの文献・資料を収集し整理するのではなく、収集できた文献・資料を精査、精読することで研究の進展をはかるものに変更している。従来の研究計画とは異なるため「やや遅れている」との区分を選択したが、研究計画の大幅な変更後はコンスタントに研究成果を出している。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症が収まりを見せるまでは、頻回な調査研究は控えたい。一方で、昨年度の調査により奈良県下の牛頭天王信仰については、未翻刻資料の存在も含めて実地調査の余地が十分あると考えているため、感染症の状況がやや収まりを見せてきた段階で、本格的な調査を行いたい。その他、埼玉・群馬県内の牛頭天王信仰については、「市神」という他地域には見られない性質が確認できているため、両地域のとりわけ街道沿いにおける牛頭天王信仰を探るため、まずは地元にあたる群馬県内の事例や文献・資料の収集に努めたい。 なお、昨年度より課題としているすでに翻刻済の文献・資料に関する検討(奈良県安堵町・飽波神社所蔵『安堵社神験記』や広島県三次市・須佐神社所蔵『須佐神社縁起』、天理大学附属図書館吉田文庫蔵『牛頭天王縁起』、『簠簋内伝』の異本系統など)については今年度も引き続き、精査、精読に勤め、その文献・資料から読み取れることはないかについて積極的に研究成果として報告していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行により、当該研究に関連する未翻刻・未発表テキストの実地調査が十分に行えず、各種学会などもオンライン開催となったことで年間の旅費の支出が当初計画よりも大幅に少なくなったため。
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Remarks |
疫病を制御する最強の神 牛頭天王とは何者か https://umai-mon.shokubunka.co.jp/blog/archives/36626 (株)食文化より依頼を受け、牛頭天王に関連する学術コラムを連載。
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