2023 Fiscal Year Research-status Report
13-14世紀におけるドミニコ会霊性の形成と展開―説教の分析を中心に
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20K12814
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
松澤 裕樹 成城大学, 経済学部, 准教授 (70780617)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ドイツ神秘思想 / タウラー / エックハルト / リンダウのマルクヴァルト / 『霊的貧しさの書』 / ドミニコ会 / フランシスコ会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「説教者兄弟団」という正式名称を持つドミニコ会における霊性の形成と展開を、マイスター・エックハルトにおける大学説教と民衆説教の比較思想研究、十四世紀の民衆説教におけるドミニコ会霊性の変容と波及に関する研究を通して解明することにある。 今年度は、①以前はタウラーの著作とされていたが、現在はその誤りが確定し、著者不明とされるドイツ神秘思想の著作『霊的貧しさに関する書』におけるエックハルトとタウラーの思想的影響を研究するとともに、②当著作と密接な関連を有するフランシスコ会士リンダウのマルクヴァルトの中高ドイツ語説教を分析することで、ドミニコ会霊性のフランシスコ会への思想的影響を研究した。また、今年度は、エックハルト全集の批判版が新たに発刊されたため、前年度には予定していなかったが、③これまで未公表であったドイツ語説教106-117の研究も追加で行った。 研究①②に関しては、まだ原典の講読を進めている段階であり、研究結果を公表できる段階には至っていない。しかし、エックハルトに端を発する「霊的貧しさ」という概念が『霊的貧しさに関する書』とその影響を受けたリンダウのマルクヴァルトの著作においていかに受容されたかという点を詳細に分析することで、14世紀におけるドミニコ会霊性の変容と波及を明らかにすることができるという手ごたえは感じている。 研究③に関しては、エックハルトのドイツ語説教117に、従来の説教で展開された思想とは異なる思想が展開されていることが判明したため、ドイツ語説教全体の思想構造について再検討する必要があることが明らかとなったが、それについて検討する段階にはまだ至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、エックハルト全集の批判校訂版が新たに発刊され、それに伴い、前年度には予定していなかったドイツ語説教の研究を行ったため、本来予定していた研究が一時中断されてしまい、研究結果を公表するに至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究結果を公表するとともに、本研究課題である「13-14世紀におけるドミニコ会霊性の形成と展開」について過去4年間の研究成果をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
科研費補助事業期間の延長が承認されたので、残額は来年度に使用する予定である。
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