2021 Fiscal Year Research-status Report
真宗地域における葬墓制と他界観に関する民俗学的研究
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20K12818
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
本林 靖久 大谷大学, 真宗総合研究所, 研究員 (30626833)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 真宗民俗 / 無墓制 / 墓上植樹 / 葬墓制 / 他界観 / 先祖供養 / 納骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の本研究は、コロナ禍の影響を受けながらもフィールドワークを断続的に実施し、真宗地域の儀礼慣行の現状を調査した。特に能登地方の真宗寺院と真宗門徒の儀礼慣行を他宗旨の場合と比較し、真宗民俗の内実について検討した。 まず、能登地方のコンゴウ参りについて、従来の研究成果を検証した。コンゴウ参りとは嫁入りした女性が、実家の親の死後、盆前の一日、実家の檀家寺へ参詣することをいう。寺側では、他家へ他出した人を孫門徒(孫檀家)と呼んで、コンゴウ参りには、孫門徒だけではなく門徒(檀家)も参詣するので、かつては参詣人の多い仏事となっていた。この行事は浄土真宗以外の他宗旨寺院においても行われているが、真言宗寺院では「金剛会」と称される法会が、浄土真宗寺院では「魂迎」「魂供」という字をあてる場合が多く見られている。 このような能登に特有の宗教民俗と言えるコンゴウ参りについて、主体となる嫁入りした女性が、婚姻儀礼や葬送儀礼を通して、婚家と実家との間において、また、両家の檀家寺とどのような関係を築いてきたのかに視点を当て、なぜ、コンゴウ参りが能登の真宗寺院の宗教民俗として続いてきたのかについて考察を試みた。 また、奥能登の重要無形民俗文化財であるアエノコト神事について、真宗門徒と他宗旨檀家との行事内容の子細について調査した。田の神様の性格として、他宗旨の家では夫婦神(2柱)で祀るのに対して、真宗門徒の家では1柱のみを祀る場合が多いことがわかった。その理由を考察するとともに真宗の土着化による伝統的民俗の心意の変化について検証した。 その一方で、昨年度に続き、真宗地域(広島県・山口県・島根県)を対象にした自治体史(民俗編)や民俗調査報告書による葬送墓制の事例報告を網羅的に把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、昨年度の北陸地方に続き、中国地方の真宗地域の葬墓制の事例を自治体史(民俗編)や民俗調査報告書によって網羅的に把握しつつ、真宗村落の宗教生活の実態の整理し、データベース化を実施した。 また、昨年度の北陸地方の資料をもとに、重点的に能登地方のフィールドワークを実施したが、コロナ禍の影響で行事に参加できないこともあり、進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の社会状況を鑑みつつ、能登における真宗民俗の調査の続きを継続する。 また、2021年度に実施する予定であった無墓制・墓上植樹の報告がある地区に調査に入り、現状を把握する。その一方で、遺骨を祖廟(本山)に納骨する儀礼がどのような歴史的背景のもとで地方に教化・流布され、真宗門徒にとって本山に納骨することがどのような意味を持つのか、その具体的な検証を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度は、コロナ禍の影響で現地調査に行くことができず、大学の図書館での閲覧に終始したため、助成金をあまり必要としなかった。 2021年度になって、真宗村落の現地調査はもとより県立の図書館や博物館に出向き、文献史料の蒐集にあった。また、研究において必要な書籍を購入し、民俗調査で得られた資料の分析と考察を進めた。しかしながら、2020年度と同様にコロナ禍の影響で予定通りの調査ができず、経費をすべて使用できなかった。 2022年度は2021年度で行けなかった現地調査も含めて多くの調査を実施する。また、必要な文献史料の蒐集にあたり、昨年度分の残金も使用し研究成果をまとめる。
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Research Products
(2 results)