2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K12826
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
赤塚 京子 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (90814244)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 新優生学 / デザイナー・ベビー / 生命倫理 / 遺伝子操作 / 遺伝子観 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、新優生学思想がどのような遺伝子観を前提としているのかを明らかにすることにより、この思想を理解・評価するための視点を獲得することにある。また、新優生学思想について理解を深めることを第一の目的としながらも、子孫への遺伝子操作をめぐる既存の倫理議論が遺伝子や遺伝に関してどのような前提のもと議論を進めてきたのか分析することで、これまでの議論の妥当性について検討を試みるものである。
具体的には、今日までに蓄積されてきた子孫への遺伝子操作(デザイナー・ベビー)に関する倫理議論を対象に、①論点を整理し、新優生学を軸とした論者間の対立構造を明らかにし、②各論者が前提としている遺伝子観(既存の議論において無自覚に前提とされてきた遺伝子や遺伝に関する知見)を分析・考察することで、遺伝子操作をめぐる議論の論理的妥当性を検討する。そのうえで、特に③新優生学を擁護する議論が前提としている遺伝子観をふまえて新優生学思想の一端を明らかにすることを目指す。
21年度は、昨年度行った遺伝子操作に関する倫理議論の論点整理をふまえつつ、各議論が前提としている遺伝子観の分析・考察を進めた。その際、疾患や遺伝形質そのものについても、各議論においてどのように論じられているのか着目した。こうした文献研究を進める過程で、当初想定していた以上に遺伝や遺伝子の概念をめぐる哲学的議論や遺伝学関連の知見を抑える必要があると判断したため、当該文献の収集・講読を重点的に実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では新優生学が前提としている遺伝子観を明らかにすることを目指しており、その遺伝子観を科学的妥当性などの観点から検討することは目的としていないが、分析・考察を進めるにあたり、当初想定していた以上に遺伝や遺伝子の概念をめぐる哲学的議論の流れについて把握しておく必要があると判断した。その結果、議論の分析・考察よりも文献講読に重点的に取り組んだため、進捗は遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
21年度は上記の理由により、当初予定していた遺伝子観の分析・考察を十分に進めることができなかった。そのため、引き続き、②に取り組む予定である。これに並行して、成果発表に向けた論文執筆を進める。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響による渡航制限により当初予定していた海外学会への参加を取りやめたため。次年度使用額は、図書購入費、成果発表に係る諸経費、国内学会・研究会への参加費にあてる予定である。
|