2021 Fiscal Year Research-status Report
『法華験記』の思想的研究―在俗者教化と東アジア法華経信仰への位置付け―
Project/Area Number |
20K12830
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
市岡 聡 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 研究員 (80788795)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 霊山院 / 地方の民衆信仰 / 畿内の仏教信仰 |
Outline of Annual Research Achievements |
11月13日に比叡山東塔にある戒壇院、法華総持院、阿弥陀堂、前唐院、根本中堂、文殊楼、国宝殿を調査し、同横川にある横川中堂、四季講堂、華台院跡、恵心院、覚超墓所、源信墓所、霊山院跡、根本如法塔を調査した。本調査の実施によって、東塔及び横川、特に霊山院に関する新たな知見を得ることができた。 11月23日及び11月24日に苗木遠山史料館、苗木城跡(以上岐阜県中津川市)、下呂ふるさと歴史記念館、温泉寺、禅昌寺(以上岐阜県下呂市)を調査し、東美濃地方東部から飛騨地方南部にかけての民衆の信仰に関する新たな知見を得ることができた。 12月25日及び12月26日に東京国立博物館、寛永寺、サントリー美術館(聖徳太子展)、湯島聖堂、神田明神を調査した。東京国立博物館では、法隆寺宝物館で展示されている青銅製仏像全部の写真撮影を行ない、上野公園にある寛永寺の塔頭の調査を実施した。本調査の博物館実施によって、飛鳥・白鳳時代の観音信仰と聖徳太子信仰について新たな知見を得、寺社調査では江戸における神仏への信仰に関する新たな知見を得ることができた。 12月29日から翌年1月1日にかけて、長谷寺(桜井市)、薬師寺、唐招提寺、興福寺(以上奈良市)、大安寺、東大寺、手向山八幡宮(以上奈良市)、八坂神社、永福寺、永観堂(以上京都市)、六波羅蜜寺、法住寺(以上京都市)を調査した。本調査の実施によって、畿内における仏教信仰に関する新たな知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は、中国での調査を予定していたが、新型コロナウイルスの影響で渡航できなかった。また、国内調査も新型コロナウイルスオミクロン株の流行と、それに伴う蔓延防止等重点措置の影響で遠方調査地での調査も実施することができなかった。中国への調査が不可能な状況にあることから、上記区分にあると考えている。 一方、本研究課題の柱である霊山院に関する調査を比叡山でできたことは大きな収穫であり、また、地元における民衆信仰の様子や畿内諸寺院の仏教信仰を調査できたことは大きな収穫であった。さらに、東京での寺社調査や博物館調査により関東地方の信仰の様子や古代の観音信仰の隆盛に関する知見を得られたことは、コロナウイルス蔓延という障害がある中で充実した成果であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの影響による中国国内での調査が非常に厳しい状況にある。このような状況下においては、日本国内ででき得るだけの文献調査を実施し、知見を広げることが最善と考える。また、現地調査が可能な日本国内における民衆の信仰に重点を置いて調査を進め、人々の信仰に関する知見を広げていきたいと考えている。 霊山院に関する調査については、文献調査を継続して行ない、比定地の現地調査も併せて実施していきたい。
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Causes of Carryover |
令和3年度収支において次年度使用額が生じたのは、新型コロナウイルスの影響で予定していた現地調査、特に中国国内での現地調査をすることができなかったことが主な原因である。 令和4年度において、新型コロナウイルス蔓延が収束すれば令和3年度に使用できなかった額の使用も可能となるが、そうでない場合も大いに想定されるので、文献資料等による調査に重点を置いて研究を進めていきたいと考える。また、『法華験記』に記される国内の地方寺院に関する民衆信仰に関する調査を進めていきたいと考えている。
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