2020 Fiscal Year Research-status Report
Political subjects and Etienne Balibar's philosophy in the age of French declonization
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20K12832
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
太田 悠介 神戸市外国語大学, 総合文化グループ, 准教授 (70793074)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 政治主体 / エティエンヌ・バリバール / イマニュエル・ウォーラーステイン / 脱植民地化 / 人種主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、研究課題「脱植民地期フランスの政治主体論ーエティエンヌ・バリバールを中心に」に関連する文献の収集、読解を進めた。コロナ禍により、夏季に予定していたフランスでの資料の収集・調査を取り止めたため、基礎的な文献の考察を中心に進めた。そして口頭発表1件、対談の翻訳・解題1件を雑誌論文に発表した。翻訳・解題については中山智香子東京外国語大学教授と共同で執筆した。成果の概要は以下の通りである。 第一に、東京外国語大学「Black Lives Matter運動から学ぶこと」連続セミナー第3回「社会の中の分断と融和」において口頭発表を行った。発表ではフランスにBLM運動が波及している現状、また脱植民地化以降の旧仏領植民地出身者に対する人種差別の歴史を踏まえつつ、本研究課題の中心的な研究対象である哲学者エティエンヌ・バリバールの1980年代以降の政治的な立場、人種主義分析、そして反人種主義論を紹介した。 第二に、上記の口頭発表に関連して、バリバールとアメリカの社会学者イマニュエル・ウォーラーステインの対談の翻訳および解題を執筆した。対談は両者の共著『人種・国民・階級』(1988)を回顧し、現代の人種主義を考察するという内容であった。解題では『人種・国民・階級』の背景となった時代状況、人種主義をめぐる両者のアプローチの接点と相違点について解説を加えた。 以上のように、本年度は研究課題の主題「政治主体論」について、特に人種主義との関わりという観点から考察を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
夏季に予定していたフランスでの資料調査を中止したため、最新の資料を現地で収集することはできなかったが、これに代えて基礎的な文献の考察を重点的に進めた。そのため資料収集・調査については当初の計画から一部変更があったものの、全体としては大きな影響はなかったと判断し、上記の評価とする。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度であった本年度は、研究課題の主題「政治的主体論」について、人種主義の問題との関わりを特に重視して考察を進めた。次年度は人種主義とは直接関連しないバリバールのテクストについてさらなる読解、考察を行う。研究成果についても論文を中心として順次公表する予定である。
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Causes of Carryover |
海外出張、国内学会参加のための費用として旅費と謝金の支出を予定していたが、コロナ禍により取りやめたため、当初の見込み額と執行額にずれが生じた。状況が許せば次年度の海外出張を一部延長して実施することで対応するが、それが困難な場合には増加が見込まれる文献の移送費・複写費を追加で計上する。
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