2023 Fiscal Year Annual Research Report
Political subjects and Etienne Balibar's philosophy in the age of French declonization
Project/Area Number |
20K12832
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
太田 悠介 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (70793074)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エティエンヌ・バリバール / 政治主体 / 脱植民地化 / 反人種主義 / インターセクショナリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の概要は、現代フランスの哲学者エティエンヌ・バリバールを主たる参照軸とし、旧仏領植民地が独立した脱植民地期から現代におけるフランスの政治主体論を解明することである。コロナ禍の影響によって現地調査が実施できず、一部の研究計画の実施が滞る時期もあったが、研究期間全体では概ね着実に作業を進め、図書、論文、口頭発表などを通じて研究の成果を随時公表することができた。 最終年度も前年度までと同様に、思想史と現代フランスの社会状況の分析という二つの視座の間の往還を重視しながら、研究を進めた。主な成果としては、ムスリム女性が着用するスカーフをめぐる1980年代以降の論争について、これをバリバールの哲学およびインターセクショナリティの観点から考察した日本語の学会発表と仏語による講演である。また、反人種主義、フェミニズム、BLM運動などの現代フランスの新たな政治の潮流や実践を取り上げた雑誌連載「政治のオルタナティブを求めて」(『ふらんす』全6回)である。 仏語の口頭発表では、スカーフ論争をめぐるフランスの近年の議論や日本のマイノリティ女性をめぐる状況との類似点などについて、現地の研究者との議論から有益な示唆を得た。バリバール以外にも人類学者ジェルメーヌ・ティヨンの地中海文化論や英米系のナンシー・フレイザーの社会正義論も取り入れつつ、スカーフ論争の考察を進めた。スカーフ論争については年度内に論文がまとまらなかったため、新年度の脱稿を急く。 そのほか、人種主義や現代フランス思想に関する書評、戦後フランスの哲学者エマニュエル・レヴィナスをめぐるシンポジウムでのコメンテーターを担当したが、いずれにおいても本研究課題の内容や本研究で得た成果の一部が反映されている。
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