2023 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Intellect and the Categories of Being in Late Antiquity
Project/Area Number |
20K12833
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
西村 洋平 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (90723916)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 新プラトン主義 / 知性論 / ペリパトス派 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「1. なぜ新プラトン主義は可能知性・能動知性を論じなかったか」,「2. 知性論と『カテゴリー論』はどのような関係にあるのか」という二つの問いに,様々な角度から取り組んでいる。最終年度は研究のまとめとして,新プラトン主義(主にプロティノス)とアリストテレス主義(アレクサンドロス)の違いと類似点について考察を深めた。また,この問題に対する知見を広げるため,アラビア哲学の形而上学を専門とするAmos Bertolacci教授を招聘し,アレクサンドロスやプロティノス的思考が,中世イスラームの哲学者たち(おもにアヴィセンナやアヴェロエス)に見ることができるのか,その場合の内実について,意見交換を行った。 本研究の最終的な結論としては,アリストテレス主義の「能動知性」が果たす根本的な役割は,プロティノスにとっては知性ではなく一者という最高原理であった,というものである(1.の問題)。それゆえに,アリストテレス主義が知性の仕組みを能動・可能というアリストテレス的概念で説明することの代わり,プラトン的なカテゴリー(類)を用いて知性を説明した。つまりプロティノスは,五つのプラトン的カテゴリー(類)を超越しつつもその原理となる一者について論じる必要があったのであり,これは中期プラトン主義には見られない新プラトン主義特有の形而上学の展開を生んだとも言える(2.の問題)。 他方で,本研究を通して,知性などの存在論的な身分についての相違はあるものの,能動知性ないし一者を究極的な認識の目的とし,この世界がそのような究極的な認識に向けて開かれているものである,といった目的論的な世界観,認識論の基本構造の理解については,新プラトン主義もアリストテレス主義も共通して有していることが判明した。この点は,アラビア哲学に両方の哲学が流入・受容されることと関連していることが確認された。
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