2021 Fiscal Year Research-status Report
アクシオン・フランセーズとキリスト教知識人―宗教思想を通じた政治思想の再解釈
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20K12837
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Research Institution | Morioka College |
Principal Investigator |
西村 晶絵 盛岡大学, 文学部, 助教 (40843800)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アンドレ・ジッド / アクシオン・フランセーズ / キリスト教知識人 / シャルル・モーラス / ジャック・マリタン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ドレフュス事件を契機として1890年代半ばのフランスで台頭し、その後1930年代初頭に衰退するアクシオン・フランセーズ(AF)の社会的影響力に関し、カトリック系保守およびプロテスタント系の作家・思想家たちから示された見解の特質を、彼ら各々のキリスト教思想を踏まえて検討しようとするものである。 2021年度は、AFに接近したカトリック系保守の思想家として、主にジャック・マリタン(1882-1973)を取り上げ、彼がAFに接近し、その後離反するに至った背景やその思索の特徴を検討した。マリタンは1920年代半ばまでAFやそのメンバーと親しい関係にあり、彼らによって示される政治思想を支持する立場を示していた。だが、1926年頃からは、AFやその中心的論客シャルル・モーラス(1868-1952)に対して批判的となり、その後決別する。こうしたマリタンの態度の変遷には、AFに対するカトリック教会や教皇庁の立場の変化があったことを指摘できる。19世紀末から第一次世界大戦前後において、教皇庁はカトリック擁護を訴えるAFと友好的な関係を築いていた。しかし、徐々にその排他的な政治思想やモーラスという個人崇拝の態度を危険視し、1926年には信者に対し、AFとの断絶を求めるに至る。マリタンは熱心なカトリック教徒であったことから、こうした教皇庁の立場と足並みを揃え、自らのAFへの態度も変化させていたことを明らかにした。 さらに、2020年度に明らかにしたアンドレ・ジッド(1869-1951)とAFとの間に見出せる関係性の特徴を踏まえ、ジッドとマリタンそれぞれによるAFへの接近と離反の具体的様相を比較し、AFとの関係を通じて浮かび上がる両者の思想的相違を示した。 これらの研究成果は、セミナーでの研究発表と、それをもとにした研究論文一本にまとめ公にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症により、フランスで予定していた資料収集を行うことができず、研究の進捗に若干の遅れが出てしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、カトリック系保守でありながらも、AFに対して常に批判的な立場をとっていた作家としてポール・クローデル(1868-1955)を取り上げ、その宗教的・政治的思想の特徴を明らかにすることを試みる。具体的には、教皇庁がAFに対して支持の立場を示していた時期においても、なぜクローデルは一貫してAFと距離を取ろうと試みたのか、またこうした態度により、カトリック作家としての彼の立場は教皇庁や信者たちからどのように捉えられていたのかという問いを検討する。 なお、新型コロナ感染症の流行が落ち着き、状況が許せばフランスでの資料収集を行うが、依然として渡航が難しい可能性もあるため、引き続き取り寄せや購入が可能な資料を用いながら、研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度中にフランスでの資料収集を予定し、予算を計上していたが、新型コロナウィルスの感染状況に鑑み、渡航を差し控えたため、旅費分の金額が残った。 2022度は、フランスおよび日本における渡航制限等を踏まえ、可能であればフランスでの資料収集を実施することにより、当該金額を使用する。渡航が難しい場合には、フランス国立図書館の複写費用や文献購入費に充てる。
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Research Products
(1 results)