2023 Fiscal Year Research-status Report
Inclusive Community in the Ecumenical Movement
Project/Area Number |
20K12838
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
藤原 佐和子 同志社大学, 研究開発推進機構, 共同研究員 (20735295)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | キリスト教 / エキュメニカル運動 / ジェンダー / セクシュアリティ / アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、日本キリスト教協議会(NCCJ)における「ジェンダー正義に関する基本方針」の策定プロセスが、アジアのエキュメニカル運動から受ける影響について検討するために、インド教会協議会(NCCI)が2011年に発表した「ヒューマンセクシュアリティに関するエキュメニカル文書」、インドネシア教会共同体(CCI)が2016年に発表した「LGBTに関するCCI牧会声明」の策定経緯を調査し、内容分析に取り組んだ。それにより、反ジェンダー運動が勃興する社会状況において、これらの協議体が(他の公認宗教とは異なり)性的マイノリティのいのちと尊厳を擁護する立場を表明していた点や、先駆的事例となっているNCCIでは、若い世代や諸宗教との連携、地域別会合の開催、神学的、聖書的考察のリソース蓄積などの戦略が採用されてきた点、CCIではいわゆる「LGBT問題」は性的マジョリティの問題であると批判的に考察されていた点などを確認した。
第二に、世界教会協議会(WCC)が2001年に立ち上げた「すべての暴力を乗り越える10年」において試みられた、ジェンダーに基づく暴力の克服のための取り組みを調査した。具体的には、WCC「教会と社会における女性」プログラムの支援によるプロジェクトに加え、とりわけ性暴力とDVの克服を目指して、アフリカを中心に展開されたタマル・キャンペーン、ジェンダー平等のための国際的政策における男性の焦点化に対応した、ポジティブ・マスキュリニティーズと呼ばれる新規な取り組みについて検討し、そこから得られた知見をもとに、DOVを総括する『ジャスト・ピース・コンパニオン』(2012年)における主要な議論を批評した。また、「サバイバーの肯定」のために働くという教会の使命について考察するとともに、ジェンダー二元論に則った取り組みの限界を指摘することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を遂行する上で、特段の問題は生じていないため。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2000年代に世界教会協議会(WCC)が主導した「暴力を克服する10年」(Decade to Overcome Violence: DOV)が、国連「世界の子どもたちのための平和の文化と非暴力のための国際の10年」と並行して展開されていた点に着目し、WCCがどのように「子どもに対する暴力」(violence against children)の克服に取り組んできたかを調査する。そのために、第一に、1972年の世界キリスト教教育協議会(World Council of Christian Education: WCCE)のWCCへの統合、1989年の国連総会における「子どもの権利条約」の採択等が、WCCによる議論と実践にどのような影響を及ぼしたかについて検討する。第二に、2013年の第10回総会(於釜山)におけるユニセフ(UNICEF)との共同声明「子どもたちを中心に据える」以降の3つの戦略(気候的正義を含む)に注目し、特に2018年の「子どものセーフガーディングに関する基本方針」、2020年以降の子どもに対する性暴力を終わらせるためのキャンペーンの意義と課題について考察する。
|
Causes of Carryover |
国内の大学図書館に所蔵がなく、各種データベースや海外の古書店を通じても入手困難であった重要資料を、2023年度に収集することができた。また、研究の進展に伴って得られた新たな知見をもとに、より高度な研究成果を得る目的で、次年度使用が生じた。2024年度においては、より学際的な視点から本研究課題に取り組むために、様々な困難を抱える女性や子どもの支援、デジタル・ジャスティスなどを議論する近接領域の学会等への参加を通じた情報・資料の収集を行う。
|