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2023 Fiscal Year Research-status Report

Research on the Reception of the Melodrama in the Classical Period in Vienna

Research Project

Project/Area Number 20K12846
Research InstitutionKyoto City University of Arts

Principal Investigator

池上 健一郎  京都市立芸術大学, 音楽学部, 教授 (20792344)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2025-03-31
Keywordsメロドラム / メロドラマ / ウィーン / マリア・テレジア / マリア・クリスティーナ / ツィマーマン,アントン / ベンダ,ゲオルク / ホーフ城
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、1770年代中葉に北ドイツで確立された劇音楽の一種であるメロドラム(メロドラマ)が、いわゆる古典派時代のウィーンにおいてどのように受容されたのかを、当時の演目に関連する一次資料の調査、および実際に上演された作品の分析を通じて実証的に明らかにしようとするものである。特に、ウィーンの政治史的、音楽史的転換期にあたる1780年頃のメロドラム創作および受容という、これまでの研究ではほとんど明らかにされてこなかった問題に取り組むことを大きな目的としている。
今年度は、これまで継続的に調査、分析を進めていたアントン・ツィマーマン作曲の《アンドロメダとペルセウス》(1780)についての研究成果を論文としてまとめ、11月にドイツの学術誌Archiv fuer Musikwissenschaftに投稿した(現在審査中)。本作は、1780年頃にウィーンの文化圏で成立した中で、一定の成功を収めた唯一のメロドラムである。それに加えて、ウィーンでの上演に先立ち、ハプスブルク家の離宮ホーフ城での祝宴において初演されていたという意味でも注目すべきで、この時代のウィーンにおけるメロドラム創作、受容の諸相を解明するための鍵となりうる作品と考えられる。本論文では、このメロドラムが、マリア・テレジアとその四女マリア・クリスティーナが列席することをあらかじめ勘案し、母娘の関係性やふたりが置かれていた政治的状況をドラマに投射した「機会メロドラム」であることを明らかにした。これまで、メロドラムは王侯貴族の権力からの強い影響を受けることなく発展したジャンルとして理解されてきた。しかし、本論によって、少なくともオーストリア周辺では、ジャンル史の早い段階から、権力者におもねるような作品も創作されていたことが示唆された。これは、ジャンル史記述の修正をうながしうる重要な成果と言える。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本研究を遂行するうえで、ヨーロッパへの調査旅行は不可欠である。特に、ウィーンにおける初期メロドラム受容の状況を再構築するためには、研究期間のなるべく早い段階で、関連する一次資料を多数所蔵している当地の図書館やアーカイヴで一次資料にあたる必要があると考えていた。しかし、新型コロナウィルス感染症の世界的流行が長引いた影響により、最初の2年間は現地調査を行うことはできなかったため、当初の計画に大きな狂いが生じてしまった。
しかし、昨年度、今年度と、オーストリア(ウィーン)、ドイツ(ゴータ、ミュンヘン)、イタリア(ローマ、フィレンツェ)への調査旅行をしたことで、研究に必要な一次資料の収集や視察はひととおり終えることができ、ひとつの研究成果をドイツの学会誌に投稿する段階までは来た。それでも、収集した楽譜、台本資料すべての詳細な分析にまではじゅうぶんに手が回っていないのが現状である。それらをもとにさらなる研究成果を生むためには、あと一年は必要であると判断したため、研究期間の延長申請を行った(認可済)。
以上から、研究の進捗は「やや遅れている」状況と理解している。

Strategy for Future Research Activity

2023年9月に、ドイツ語メロドラムの実質的な発祥の地であるゴータのエクホーフ劇場(Ekhof-Theater)を視察したことで新たな示唆を得たので、それをひとつの成果としてまとめるのを次年度の大きな目標としたい。17世紀に建設されたエクホーフ劇場は、風音器や雷鳴器(風や雷鳴を模した音を発する装置)や素早い舞台転換装置といった、スペクタクルな舞台効果を生む当時としては最新の技術が売りであった。この劇場で1775年に初演された、ゲオルク・ベンダ作曲の《ナクソス島のアリアドネ》や《メデア》は、終盤に向かうにつれて劇的緊張感が増し、音楽による嵐の描写とともに悲劇的結末へと向かうという特徴がある。大団円を基本とする当時のオペラとは一線を画すこの独特のドラマトゥルギーは、メロドラムの人気に火を付けた大きな要因であるとともに、以後のメロドラム創作のひな型となっていった。しかし、初演時の文脈に置き直して見ると、こうした構想が、臨場感のある嵐の描写を可能にする舞台装置を前提に練られていた可能性が高い。つまり、劇場のポテンシャルを最大限に生かし、聴衆に大きな劇的効果を与えるためには、嵐の描写と、それによって象徴される悲劇のクライマックスが最適だったのである。言い換えれば、劇場の装置がドラマや音楽の内容を規定していたというわけだ。
メロドラムというジャンルが、当時の知識人によって新聞や雑誌上で盛んに議論され、それがメロドラム創作に少なからず影響を及ぼしたのは間違いない。しかしそのいっぽうで、メロドラムの創作が「場の論理」によっても方向づけられていたことを見逃してはならないだろう。こうした視点は、これまでのメロドラム研究ではじゅうぶんには論じられてきていないため、次年度はこの視座から、特に1780年頃までのメロドラム創作を改めて見直す作業を進めてゆくつもりである。

Causes of Carryover

新型コロナウィルス感染症のパンデミックが長引いた影響で、研究計画に遅れが生じたため。次年度分は、文献の購入と複写、および国内旅費として使用する予定。

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Published: 2024-12-25  

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