2020 Fiscal Year Research-status Report
Regional Study of Japanese Film Exhibition: A Case of Nara Obanagekijo
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20K12849
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柴田 康太郎 早稲田大学, 坪内博士記念演劇博物館, 次席研究員 (00801060)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 映画館 / サイレント映画 / 映画興行 / 奈良 / 弁士 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、サイレント期から戦後に至るまで長期にわたり奈良において映画興行を行った尾花商会による尾花劇場等の映画館経営資料(ホテル尾花蔵、以下「尾花劇場関連資料」)を分析することで、地方都市における中規模の映画館の興行実践を捉えるとともに、これを関西圏のその他の映画館の動向との関係のなかで考察するものである。2020年度前半は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により資料を所蔵するホテル尾花への調査出張が困難であった。そのため初年度の12月までは先行研究の調査と関連資料の調査に徹することとした。 まず、尾花劇場を取り巻く1920~30年代の映画館に関する情報を捉えるべく、早稲田大学演劇博物館を中心に映画館プログラムの調査を行った。特にサイレント期からトーキー初期の関西のもの、および資料が相対的に多く残っている東京の中小規模の映画館のものを閲覧・考察し、中小規模の映画館である尾花劇場を取り巻く配給網に関する基礎的考察を行った。併せて、数々の帳簿資料によって構成される尾花劇場関連資料には目下の調査では1930年代の帳簿資料が確認できないため、補完的に演劇博物館の松竹座関連資料の帳簿資料を考察し、戦時体制下で作成が推奨された帳簿のあり方を分析した。また、尾花劇場資料に含まれるトーキー争議関連資料の補完的調査として、法政大学大原社会問題研究所の『社会・労働運動大年表』データベースで公開されている映画館関連の労働争議資料の調査を行い、サイレント期からの映画館での労働争議における課題を考察した。 尾花劇場資料については年明けに出張を実施し、資料全体の簡易的な目録を作成するとともに、次年度の考察に向けての調査と写真撮影を行うことができた。今年度は特に尾花劇場におけるトーキー争議関連資料とサイレント期の帳簿資料を対象に取り組むこととし、研究補助者を雇用して翻刻とデータベース化を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度前半は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、年度早期の尾花劇場関連の調査出張が困難となった。そのため中心となる対象資料の調査開始が大幅に遅れることとなった。12月までは関連資料の基礎調査に専念することとし、早稲田大学演劇博物館を中心に映画館プログラムや関連の帳簿資料等の調査を進め、次年度の考察に向けた準備を行った。尾花劇場関連資料の調査は1月に入って調査出張を行うことで実施し、所蔵者であるホテル尾花で資料の確認と写真撮影を行った。これにより、尾花劇場関連資料の簡易リストを作成するとともに全体像を把握し、資料の翻刻と読解に着手した。2020年度は研究補助者を雇用して適宜、1920年前後の帳簿資料の調査、およびトーキー転換期のストライキ関連資料の翻刻とデータベース化に着手し、資料の読解を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2020年度に撮影した資料写真をもとに、資料の考察を本格化させる。トーキー争議関連資料については、国会図書館等において同時代の『奈良新聞』等の地方紙の調査を行うことで上映作品等の具体的な映画館興行の基礎情報を捉える。また当時の映画雑誌や年鑑類の調査によって尾花劇場の労働争議を支えた総同盟全国関西映画演劇同盟の活動調査を行い、尾花劇場の事例が関西のどのような映画界の動きの中にあったのかを考察する。併せて、サイレント期のなら尾花劇場、奈良電気館などの帳簿資料の考察を進める。帳簿資料は数字のデータベース化を行ったうえで分析を行う必要があると思われるため、1919~25年の帳簿資料を中心に帳簿をデータ化・分析し、関連研究会や学会等での研究発表を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、調査出張の時期が当初の想定より大幅に遅れることとなった。これに対応して、この出張で撮影する資料画像をもとに依頼する予定であった研究補助者の雇用期間が短くなった。
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Research Products
(2 results)