2021 Fiscal Year Research-status Report
海を渡るオペラ:1920年前後の白系ロシア人歌劇団に関する国境横断的研究
Project/Area Number |
20K12851
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Research Institution | Nagoya College of Music |
Principal Investigator |
森本 頼子 名古屋音楽大学, 音楽学部, 非常勤講師 (50773131)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オペラ / 巡業 / 白系ロシア人 / 来日ロシア人 / 日本オペラ史 / 地方公演 / 上海租界 / 大正時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画どおり、本年度は「ロシア大歌劇団」の日本公演(1919、21年)について調査した。昨年度と同様、コロナ禍により資料調査に制限はあったものの、神戸在住の研究協力者の力を借りて、神戸・大阪・京都公演について網羅的な調査を行うことができた。その結果、「ロシア大歌劇団」の公演は、関西の楽壇に本格的な外国オペラを知らしめる出来事になっただけでなく、大正期に関西各地に建てられた近代的な劇場や公共施設で外国人演奏家を受け入れる最初期の試みとなったことが明らかになった。 また、本年度は「ロシア大歌劇団」がオペラ上演に使ったと考えられる楽譜の所在を突き止め、一部の楽譜の中身を確認することができた。このうち《アイーダ》の楽譜にみられる書き込みの内容と、日本公演の批評とを突き合わせ、《アイーダ》上演がどのようなものであったかを考察した。その結果、「ロシア大歌劇団」のオペラ上演は、帝政末期のロシアの私立劇場や地方劇場で行われていたオペラ上演を反映するものであることが明らかになった。この研究成果を日本音楽学会の全国大会で報告したところ、フロアから多くの意見や質問を得ることができた。また、「白系ロシア人が伝えたオペラ――大正期「ロシア大歌劇団」の日本巡業」という論文をまとめ、編著を務めた論集『音楽と越境――8つの視点が拓く音楽研究の地平』のなかで発表した。 さらに、上海のフランス租界に関する科研グループと、日露の音楽文化交流に関する科研グループに、それぞれ研究分担者としてかかわることで、白系ロシア人の音楽活動について、東アジアの音楽文化および日露関係史という新たな文脈から考えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により、特に海外での資料調査が十分に行えていない。また、2月に始まったウクライナ侵攻により、ロシアでの資料調査については見直さざるを得ない状況に陥っている。ただ、本年度はインターネットを活用して海外の資料を取り寄せたり、新たな情報を得たりできたので、来年度以降も工夫して調査を行うことで研究の遅れを取り戻せると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ウクライナ侵攻を受けて、3年目以降に予定していたロシアでの資料調査は延期する。3年目は、引き続き「ロシア大歌劇団」の日本公演の調査を進めるとともに、日本以外のアジア諸地域(上海、マニラ、香港、インド等)でのオペラ公演についても、国内の研究機関が所蔵する資料や、新聞・雑誌のデータベースを使って調査する。国内での移動制限や図書館等の利用制限は緩和されつつあるので、国内での資料調査を積極的に行いたい。また、引き続きインターネットを活用して海外の研究者とも連絡をとり、「ロシア大歌劇団」に関する情報・資料の収集に努める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で、1年目に予定していたロシアへの渡航や、国内各地での資料調査を断念したため、未使用額が生じている。この先も、ウクライナ侵攻によってロシアへの渡航が難しいことをふまえて、まずは国内での資料調査を優先的に進めていきたい。
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Research Products
(3 results)