2020 Fiscal Year Research-status Report
Kinetism - Soviet Media Art
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20K12862
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
河村 彩 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 助教 (20580707)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | キネチズム / キネティックアート / 運動グループ / コレイチュク / メディアアート / ナウム・ガボ / ロシア構成主義 / ロシアコスミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は1960年代から70年代にかけてソヴィエトで興隆したキネチズムと呼ばれる一連の芸術運動を「東側」のメディア・アートとみなし、ヨーロッパおよびアメリカを中心とする現代美術史に対するオルタナティヴとしての特異性を明らかにするものである。キネチズムの作家たちはモーターで動くオブジェや、音や光、映像を用いて鑑賞者の五感に訴えかけるスペクタクルを、科学エクスポや博覧会などの場で展開し、その活動は非公式芸術とは一線を画すものであった。 当該年度は現地での資料調査が不可であったので、これまでの調査で収集した資料を元に1960年代から70年代にかけてのソヴィエトのキネチズム、とりわけヴャチスラフ・コレイチュクと「運動」グループの活動に焦点を絞って考察を行った。 これらの作品を考察するにあたり、1920年代の構成主義およびナウム・ガボやカンディンスキーらアヴァンギャルドの理論と実践をいかに受け継いでいるかという点を重視した。また当時宇宙開発に成功し、科学技術立国であったソヴィエトにおいては、キネチズム作品は国内外の科学エキスポにおける「装飾」として制作されたが、その背景にはヴェルナツキーらのロシアコスミズムと呼ばれる思想の影響があることを考察した。公的な場で展示されたキネチズム作品と、モスクワ・コンセプチュアリズムを代表する他の非公式芸術との違いにも焦点をあてた。 研究成果は表象文化論学会学会誌『表象』第15号(2021年5月発行予定)に論文「宇宙開発時代のメディアアート:ソヴィエト連邦のキネチズム」というタイトルで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの影響で海外での調査ができない点は計画とは異なるが、今年度はこれまでの調査によって得た資料を元にし、テーマを絞って第一段階の研究成果として論文にまとめることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、世界有数のソヴィエト非公式芸術のコレクションであるコスタキ・コレクション(ギリシアのテッサロニキ現代美術館所蔵)、ノートン・ドッジコレクション(アメリカのラトガース大学付属Zimmerli美術館所蔵)等での現地調査を予定している。ただし新型コロナウイルスの感染状況によっては海外渡航が困難となるため、その際は文献調査を元にしたソヴィエト非公式芸術の研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行のため、海外での調査、発表のための出張が不可能だったため。ソヴィエト非公式芸術のコレクションであるコスタキ・コレクション(ギリシアのテッサロニキ現代美術館所蔵)、旧ソヴィエト連邦で、モスクワおよびサンクトペテルブルクの美術館に次ぐロシア・アヴァンギャルドのコレクションを持つイゴール・サヴィツキー記念カラカルパクスタン共和国国立美術館(ウズベキスタン、ヌクス)での現地調査のために、旅費として使用することを予定している。
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