2023 Fiscal Year Research-status Report
両世界大戦間期フランスの事例を中心とした写真の時代様式区分に関する制度批判的研究
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20K12864
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
礒谷 有亮 神戸大学, 国際文化学研究科, 講師 (70845304)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 写真史 / フランス / 写真 / 1930年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では両世界大戦期のフランスにおいて、ピクトリアリズムからモダニズムへの移行という従来の写真史における進化史的な見方が当てはまらない状況が存在したことを明らかにする。その上で、戦後の写真史の語りの形成の分析を通してこうした状況が等閑視されてきた原因を考察し、時代や様式の区分に基づく従来の写真史に批判的検討を加える。 今年度は時代様式上折衷的な傾向を示した戦間期フランスの写真家や写真動向が、戦後整備される写真史のなかで忘れられていった原因を探るべく、1936年にパリの装飾美術館で開催された同時代フランス最大規模の写真展、「現代写真国際展」を中心に考察した。その内容は「「現代写真国際展」(1936年)についての一考察」と題する論文として刊行した。同展では写真は独立した芸術分野として扱われ、写真がフランスで美術館のなかに位置を占める重要な機会を作った。ところが、展覧会の開催主体であり、同時代の写真の振興を牽引した人物のひとりであるシャルル・ペニョは、印刷出版およびグラフィック・アート関連の事業を本業としていたため、この展覧会以降、写真からはほとんど手を引いてしまったことが理解された。フランス戦間期の写真はペニョはじめ主に印刷出版関係者によって支えられていた。本論文の内容は、彼らの関心の変化がこれ以降のフランスでの写真の美術館への定着の遅れに影響を及ぼした可能性を示すケース・スタディとなった。 論文執筆以外には9月に渡仏し、ペニョの遺族に聞き取り調査を行った。またフランス国立図書館を中心に、戦間期から第二次世界大戦後にかけての写真関連雑誌・記事の調査を行い、戦後のフランスにおける写真史形成について調査を進めた。これらと同時に、これまでの内容をまとめて単著として発表する準備を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍により当初の助成期間3年の間に予定していた海外渡航が叶わず、昨年度助成期間の延長申請を行った。本年度はようやく海外渡航が実現したものの、当初の計画からはやはり遅れているため、再延長申請を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は戦後の写真史形成の中心地となったアメリカ、ニューヨーク近代美術館において戦間期フランスの折衷的な傾向がどのように扱われていくかを主たる調査研究の対象とする。同時にフランスにおける戦後の写真の歴史化の過程を考察し、アメリカでの状況と比較検討する。 上記の調査を進めるとともに、これまでの研究内容をまとめて単著として刊行する予定である。必要に応じて不足している資料の補助調査を行い、年度内の刊行を目指している。
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Causes of Carryover |
延長申請以前に予定していた海外渡航しての一次資料調査がコロナ禍によりかなわず、旅費として計上していた額を使用することができなかった。2024年度にはこの残額は主として旅費と調査に伴う物品費に充当予定である。また2023年度までと同様、書籍等は継続的に購入する。
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