2020 Fiscal Year Research-status Report
名物裂を中心とした日本伝世古渡裂の歴史的・技法的成立過程を探る研究
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20K12880
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Research Institution | Kyushu National Museum |
Principal Investigator |
桑原 有寿子 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部企画課, アソシエイトフェロー (50784039)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 名物裂 / 金襴 |
Outline of Annual Research Achievements |
「名物裂を中心とした日本伝来古渡裂の歴史的・技法的成立過程を探る研究」は、現在日本にて名物裂と呼称される種の古裂について、国外、特に中国において新発見されている出土染織品と比較しながらその成立の過程を探るものである。当初、2020年度は必要な物品を購入した後、中国に残された染織品の調査を行い、日本伝世裂の歴史的背景と技法を明らかにする予定であった。しかしながら新型コロナウィルス感染症感染拡大防止措置を受けて海外調査を行うことが難しかったため、必要な物品の購入と日本伝世裂の調査、およびその成果を示す展覧会を行った。 日本伝世裂の調査としては、個人蔵の名物裂を中心に、顕微鏡調査および高精細画像の撮影、赤外線(IR)撮影を行った。これにより、裂に残された墨線や、従来同一の裂と思われていた補修裂が別の織物からの転用であることが判明した。また金糸入り織物の文様の記録にも、可視光撮影よりもIR撮影のほうが適していることが判明した。 また、顕微鏡調査の成果を生かした展覧会「九州国立博物館開館15周年記念 特集展示 織物に魅せられて 加賀前田家伝来の名物裂」を2020年12月1日から2021年1月24日にかけて九州国立博物館にて開催した。この展覧会は、九州国立博物館所蔵の名物裂「前田家伝来名物裂帖」の他、京都国立博物館所蔵の前田家伝来名物裂14点や、個人蔵の「前田家伝来名物裂帖」、個人蔵の「鴻池家伝来裂箪笥」などを拡大写真とともに展示したものである。金襴のルーツである中国・金時代の動物性金糸による金襴(個人蔵)の展示も行い、名物裂の歴史的な背景と技法にせまる展示をおこなうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」に記載したとおり、新型コロナウィルス感染症感染拡大を受けて中国における染織品調査が行えなかった。また、海外研究者を招聘しての国内共同調査や研究会を行う予定であったが、それも叶わなかった。現在のところ海外出張の見通しが立たないため、2021年度も中国における調査が行われるか不明である。本研究には中国における新出土染織品の調査が不可欠であることから、現地調査が行えるようになるまで研究は当初の目的を満たさず、遅れることが見込まれる。また、予定していた学会発表も、開催中止となったため行われなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」に記載した事由により研究がやや遅れている。2021年度も海外出張が行われない可能性を勘案して、以下のように進行を修正する。 2021年度は日本伝世の名物裂の高精細撮影及び赤外線(IR)撮影を推進する。 2022年度は中国における新出土染織品の調査、および海外研究者を招聘して共同調査を行う。 2023年度はIASSRTでの成果発表、および本研究の報告書の発行を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大を受けて、海外出張及び海外研究者の招聘が行われなかった。このため旅費として予定されていた分が余剰金となった。この金額は2021年度の旅費として繰越し、海外出張費として活用したい。
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