2020 Fiscal Year Research-status Report
狩野派の地方展開黎明期の実態についての研究ー福岡藩御抱え絵師・尾形家を中心にー
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20K12881
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Research Institution | Kyushu Historical Museum |
Principal Investigator |
日野 綾子 九州歴史資料館, 学芸調査室, 研究員 (20803315)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 狩野派 / 近世絵画史 / 御抱え絵師 / 福岡藩 / 尾形家 / 画稿 / 粉本 / 狩野探幽 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度(令和2年度)は、尾形家絵画資料のうち、初代仲由、第二代守義制作の画稿の調査を行った。これらは計331点あるが、福岡県立美術館の全面的協力を得て、このうち110点の調査及び写真撮影を終えることができた。次年度以降も残りの画稿調査を継続して行う予定である。 画稿調査の成果としては、第二代守義制作の画稿の中に、すでに調査を終えている第三代守房の画稿と同図様の画稿をいくつか発見した。これは、ふたりが師である狩野探幽のもとで同じ図様を学んだか、あるいは守房が先代の守義の画稿(あるいはそれをもとに作られた作品)を模写・学習したことを示しており、尾形家の絵画学習の実態に大きく関わる。これらが制作された背景については、図様の比較をもとに慎重に考えていきたい。 また、今回同一制作者の画稿を抽出したことにより、屏風絵の画稿が各扇ごとに目録上それぞれ違う題名を付されて同一画だと分からなくなっていたものを、PC画面上でいくつか再構成できたこともひとつの成果であった。特に守義の画稿には守房に比べ屏風の下絵が多く見られ、虎図や阿育王寺図、賀茂競馬図の一部を再構成することができた。こうした事例を見逃さないよう、今後の調査でも注視して見ていきたい。 このほか、公務で尾形家第六代守厚の制作した三十六歌仙図扁額(宗像大社蔵)の調査を行った際、守義の三十六歌仙図画稿と衣文線などが一致することを発見した。つまり、守義画稿を後世の同門絵師が制作の際に参照したものと考えられる。このように、このたびの研究成果をもとに画稿と実作品とのつながりも見え始めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、予定していた尾形家絵画資料の調査研究および撮影を進めることができた。報告書に掲載予定の調査データの整理や年表の作成なども進んでいる。 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、寺社や個人宅への訪問がはばかられ、当初予定していた三代の実作品の調査を全く進めることができなかった。また、関連する研究書などの購入は行っているが、近隣の大学図書館の利用制限などから、関係論文の収集もやや停滞気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
尾形家絵画資料については、継続して調査研究および撮影を行い、令和3年度中あるいは令和4年度初めまでには完了する予定である。作品調査については、三代の現存作品を悉皆的に調査する予定だったが、新型コロナウイルスの感染状況によっては難しいことも予想される。状況を注視しながら、まずは公的機関所蔵のものから作品調査を進めていきたい。寺社、個人蔵の作品については、画題に偏りがないように、画稿との関連度の高いものを優先的に実施していく。 また、東京所在の狩野派作品で、三代の画稿との関連性が見いだせる作品がいくつかあるため、研究期間終了までに作品調査を行いたいと考えているが、県外出張の制限などもあるので、こちらも感染状況を見極めつつの実施となるだろう。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染が拡大したため、予定していた作品調査が実施できず、その分の旅費および人件費の支出が無かったゆえに多くの次年度使用額が生じている。作品調査は、感染状況を見ながら次年度に可能な限り実施し、繰越分はその旅費および人件費に充てる。
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Research Products
(3 results)