2020 Fiscal Year Research-status Report
学校教育における演出付合唱作品の歴史的変遷:《オルフォイス》から《追分節考》まで
Project/Area Number |
20K12887
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
仲辻 真帆 東京藝術大学, 音楽学部, 助手 (60822715)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 声 / 合唱 / オペラ / シアターピース / 作曲 / 音楽劇 / 音楽教育 / 近現代日本音楽史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、明治時代の西洋音楽受容期から近現代までの合唱作品に関する歴史的・実証的研究の一端を担うものである。とりわけ「演出付合唱作品」として、学校内で上演された/教育的意図をもったオペラや、音楽教育に対して問題提起をしようとしたシアターピース(身体の動きを伴う音楽表現、あるいは通路・客席を含む劇場空間全体を活用する作品)に着眼する。具体的には、明治期に上演された《オルフォイス》、昭和初期に教育向けのオペラとして取り上げられた《ヤーザーガー》、そして明治以来の音楽教育システムを告発する意図を内在させた《追分節考》を考察対象としている。 本研究は、史資料の調査・分析および関係者へのインタビュー調査等に基づき、上記の三作品についてそれぞれ上演のねらいや演奏の実態を明らかにする。研究結果により、近現代日本の音楽史や音楽教育史がたどってきた軌跡とそこに内在する問題点を提示する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
考察対象としている作品について、楽譜、写真、音源、新聞・雑誌等の調査をおおむね予定通りに進めることができた。令和2(2020)年度の調査概況は次の通りである。明治期に上演された《オルフォイス》については、楽譜への書き込みを参照しながら上演当時の日本語の歌詞を検証している。昭和初期の《ヤーザーガー》に関しては、東京音楽学校における上演実態を解明するための史資料の探索を継続している。柴田南雄の《追分節考》については、作曲者宅で自筆譜調査や聴き取り調査を実施した。今後は全ての研究対象に関して個々の調査・分析を進めると同時に、それらを近現代日本の創作史・演奏史・学校教育史などの文脈の中で考察してゆく。 令和2(2020)年度は2件の学会発表(口頭発表)をおこなった。また、本研究の主軸をなすものではないが、関連研究として團伊玖磨の《夕鶴》に言及した論文を投稿した(令和3年刊行予定)。 新型コロナウィルスの感染拡大にともない、文献調査に若干の遅滞があったほか、聴き取り調査を紙媒体へ変更するなど研究手段に変更点が生じたが、総じて研究はおおむね順調に進展しているということができる。なお、学会発表がZoomにより実施されたため、旅費の支出は予定より減額した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3(2021)年度は引き続き史資料の調査・収集をおこないつつそれらの分析・考察を進め、近現代日本の音楽教育や音楽文化の歴史的潮流において研究対象がどのような位置づけおよび意義を有するのかを検討する。 最終年度となる令和3(2021)年度は、研究の遂行とあわせて成果発表にも力点を置く。研究結果については国内外の学会・研究会で報告するとともに、学術誌に論文を投稿する。
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Research Products
(2 results)