2023 Fiscal Year Research-status Report
ピアノの巧緻運動スキル向上のための手引きの開発:打鍵動作と筋収縮の関係に着目して
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20K12890
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
福富 彩子 愛媛大学, 教育学部, 教授 (90549388)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ピアノ演奏法 / 身体メソード / 表面筋電図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ピアノ学習者の演奏スキル向上を図るとともに、近年深刻な問題となっている演奏家の心身の不調和や故障、疾患等を未然に防ぐ練習方法の開発を目的としている。申請者は「鍵盤楽器における演奏指導法の開発:身体メソードを中核として(課題番号:17K14039(若手研究B, H29-R4)」においてピアノ学習者を対象とした予備実践を行い、練習を助けるための複数の「補助的な動き」を抽出した。それらの動きの有効性を検証する実験の結果、1)打鍵時に指先に 伝達する力は緩めず、指先以外にかかる動作筋収縮の緩和を促すことで手指の巧緻性を高めること、2)指先の触感の意識化とともに、動かす指以外の身体部位に動きの制限を与えることで特定の指の独立・分離を促進させることが示唆された。本研究は、これらの調査で得られた知見に基づき、打鍵動作と筋収縮の関係に着目した体系的な動きのあり方を検討し、演奏時の筋電計測のデータを根拠として、有効な練習方法を提案することを目的としている。 当該年度は、10年以上の経験を有するピアノ学習者を対象とした補助的な動きの実践及び筋電計測(筋電センサーTS-MYO)を伴う実験を、愛媛大学教育学部研究倫理委員会(2024年5月16日付)の承認を得て実施した。演奏身体法有資格者の協力を得て、2つの「補助的な動き」①指の触覚を促し各指の独立を促すエクササイズ、②肩甲骨から前腕までのしなやかな動きを促すエクササイズーを整理し、実践動画を作成した。本実験では、2つの課題(ドホナーニの練習曲、六度間のトレモロ音型)を組み合わせた4パターンの演奏課題を設定し、対象者に補助的な動きの実践前後に演奏してもらった。評価は、①筋電計測(右手前腕の屈筋・伸筋)、②演奏(リズム・音色等)の客観的評価、③対象者自身の自己評価により行った。現在、専門家の協力を得て筋電計測結果ついて解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究がスタートした2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が5類感染症に移行するまでの間、専門家との対面による身体法の研究や対象者への演奏身体法の実践・筋電計測を伴う実験が行えない状況であったが、2023年度より研究が進められるようになり、予備的な実験を得て、2024年2月に研究協力者への筋電計測によるデータ採取を実施することができた。現在、専門家の協力を得て筋電計測の結果について解析・分析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られたデータを整理して分析・考察を行い、学会、紀要等での発表を行う。具体的なスケジュールは次のように予定している。R6/4月-6月:演奏時の筋電図・映像の解析(専門的助言)、R6/7-8月:解析結果の考察(専門的助言)、R6/9月:学会発表準備、R6/10月:学会発表、R6/11月-R7/2月:論文執筆、R7/3-4月報告書作成。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、本研究がスタートした2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が5類に移行するまでの約3年間は、専門家との対面による調査研究および対象者への演奏身体法の実践、データ採取が行えない状況であったためである。2023年度からようやく研究が進められるようになり、筋電計測を伴う実験を終えている。2024年度は、動画処理・データ解析に必要なPCの購入(物品)、2024年2月に実施した実験データの解析・考察の専門的助言(謝金)、学会発表(旅費・参加費)での使用を計画している。
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