2020 Fiscal Year Research-status Report
The labour, leisure, and work for people engaging arts
Project/Area Number |
20K12897
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
高橋 かおり 立教大学, 社会情報教育研究センター, 助教 (30733787)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 芸術家 / ジェンダー / 地域 / 労働 / 余暇 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、基礎的研究として先行研究ならびに先行調査の整理作業を行った。第一に、文献精読においてはAngela McRobbieの『Be Creative』を読み込んだ。とりわけ、イギリスを中心としたヨーロッパにおける文化業界の労働におけるジェンダーの問題は、家事労働や家庭内役割の問題と合わせて論じる必要があるという視座を獲得できた。 第二に、国内で美術作家へのインタビューを行っている実務家兼研究者との公開研究会(文化政策学会企画フォーラム)を実施し、芸術家を社会科学の調査対象とする意味と意義について議論を行った。議論の結果、特にジェンダーの問題は30代以降顕著になり、現状把握が不十分であることが芸術家支援政策や行政の助成制度の改正や成立において阻害要因となっているということが明らかになった。 本研究の主題である移動については、2020年度以降大きな制約が発生したため、以下の2点についても整理を行い、検証のための調査は2021年度以降の計画に反映させることとした。 第一に、他地域の研究者との議論や調査協力者とのやり取りを踏まえ、移動ができない中で現在の居住地域における活動をいかに成り立たせているのかを本研究の新たな論点として追加する。特に東京を中心とする関東近郊の文化関係者の実態を明らかにすることの必要がある。この点は国外移動に制約がかかる2020年春以降の状況を踏まえ、2021年度以降の調査計画を修正することで、明らかにしていく。 第二に、芸術家個人への公的支援が国際的に議論となったことを踏まえ、国内外の芸術家への経済支援政策や各種調査の整理を行い、日本独自の議論を整理する方針を見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍により調査出張や対面インタビューが中止になったり実施しにくくなったことに加え、調査協力を予定していた人たちの生活や活動の状況が大幅に変更したため、ほとんど調査が実施できなかった。そのため、インタビュー調査を中断し、調査計画を修正する必要が生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度以降は、社会情勢に合わせて当初の調査計画を修正し、まず2021年度は関東近郊で芸術活動に従事する人たちの活動を調査する。特に、女性の芸術活動に焦点を当て、①仕事として従事する人の余暇や周囲との関係の調整と、②余暇として従事する人たちの本業と周囲との関係の調整について聞き取り調査を行う。 合わせて、国内外の芸術家への公的支援政策や活動団体の要望等を整理し、日本における芸術家の扱いや区分について、日本の文脈を踏まえて整理する。このことは、芸術家を仕事としてみなす議論を整理することにつながると同時に、芸術への支援の必要性を感情的ではなく理論的に訴え、議論する基盤を整えることとなる。 2022年度は、当初の予定通り調査出張も含めて国外に拠点を置く芸術家への調査を実施し、特に2020年前後の変化を前提にしつつ、芸術活動における拠点選択と仕事の関係を明らかにする。 これらの調査結果と2020年以前の状況を整理しつつ、本研究の成果を国内の学会誌や国内外の学会に置いて報告を行う。
|
Causes of Carryover |
予定していた国際学会への出張がオンライン開催になったため、旅費の執行がなくなった。また、調査計画の変更によりインタビュー調査が実施できなかったことから、調査に関わる予算執行(謝金・人件費、旅費)はできなかった。 2021年度以降は、2020年度に実施できなかったインタビュー調査を国内を中心に進める。なお、国内の調査においては情勢を鑑みつつ出張を伴う調査も実施する。合わせて、国際的な研究交流や調査においてはオンラインを原則としつつ、調査に係る経費(謝金・文字おこしの外注費)や、国際学会や研究会でのは発表に係る経費(英文校正費用・参加費等)として予算を執行する。
|