2020 Fiscal Year Research-status Report
A Study of the Social Role of Contemporary Art as Cases of Artists Groups in Indonesia and Other Southeast Asian Countries
Project/Area Number |
20K12900
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Research Institution | Professional Institute of International Fashion |
Principal Investigator |
廣田 緑 国際ファッション専門職大学, 国際ファッション学部, 准教授 (30796298)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 東南アジア / インドネシア / 現代美術 / 美術家集団 / コレクティヴ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、インドネシアを中心とする東南アジア現代美術の具体的な事例から、現代美術がいかに社会的役割を果たしうるのか/えないのかを明らかにすることである。 第二次世界大戦後の欧米で生まれた現代美術(contemporary art)は、1970年代後半、独立後の政治・経済的混乱が残るインドネシアの美術家に受容され、民衆の代弁者として世相を映す「インドネシアの」現代美術として発展した。しかし2007年頃になると、中国に端を発する現代美術バブルによって、現代美術は市場で高額に売買される投資の対象となっていった。その後、2015年頃から、ソーシャリーエンゲイジドアート(社会関与型アート)と称される、社会問題に深くコミットするアートの実践が、若手芸術家を中心に目立ち始めた。本研究は、彼ら/彼女らが実践する社会関与型アートを事例に、現代美術がいかに社会的役割を果たしうるのか/えないのかを明らかにする。 当該年度は、予定していたインドネシア(ジョグジャカルタ)で開催される国際展ART/JOGの現地調査を断念した。現地でもコロナの影響により、来場者を大きく制限し、オンラインでの発信を試みる展覧会となったため、当初は想定していなかったコロナ禍における美術活動の発表方法を探る機会となったことは収穫だった。とくに、かつては首都や地方都市のみが活動場だった現代美術が、オンライン発信という新たな方法を見出し、スマトラ、スラウェシなど従来は現代美術の実践がほとんど行われていなかった場からの発信力を確認することもできた。 今後の世界的状況を鑑み、以降の調査で主となっていた現地調査の方法については、申請時の方法とは異なる代替も視野に入れる必要があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「(4)遅れている」を選択せざるを得ない最大の原因は新型コロナウィルスによる渡航の制限である。初年度に予定していたインドネシア、マレーシアでの調査を断念しただけでなく、国内で予定していた福岡アジア美術館での文献調査も緊急事態宣言のために延期した。 当該年度の後半になり、ようやくZOOMなどを使用した調査方法(研究対象となるインフォーマントへのインタビュー)を模索する時間ができた。今後は新たな調査手段として、オンラインを使ったものが有効的な選択肢となるだろう。初年度の遅れは、次年度で取り戻していきたい。 研究計画に入れていた関係者とのシンポジウムなどについても、オンライン開催を念頭に、方法を模索していく。福岡芸文館が2021年度に開催するインドネシアのコレクティヴ(アーティスト主導の集団)シンポジウムでは申請者のガイダンスをはじめとして、インドネシアより7グループの参加があるため、これを活かし、情報収集の足がかりとする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では重要な役割である東南アジア諸国での現地調査について、今後のコロナの現状を踏まえながら、代替策も想定していくことが推進方策の最大の課題ではないかと考える。申請者自身の早急なワクチン接種もさることながら、調査地のコロナ関連の情報をこまめに確認し、安全を見極めた調査計画を練ると共に、渡航中止の場合の調査方法についても、考慮する必要がある。 予定していた参与観察に変わる手法としては、調査対象とする芸術家集団や芸術家の活動を、彼らの発信するフェイスブックやインスタグラムで確認をし、そのデータの積み重ねから、現代美術の実践がコロナ禍においてどのように行われているのかを考察する方向へ向けていきたい。図らずも新型コロナウィルスが東南アジアでも猛威を振るったことにより、芸術家が社会的困難に関わる事例が見つけやすい事を本研究の利点と考え直し、全体の計画をコロナを前提としたものに変更していく。 しかし、今までは対面で信頼関係を作り、時間をかけて聞き取ってきた調査手法の代替は何か、まだ答が見つからない。多くの予算を要する海外調査費については、今後のコロナの状況次第では、その予算を報告書(論文資料集)の翻訳、また、オンラインによるシンポジウム開催費へ転用し、充実した研究の計画を立て直したい。 令和4年度に調査予定の大型国際美術展「ドクメンタ2022」(ドイツ・カッセル開催)は、本研究で重要な位置を占めるものである。「ドクメンタ」同様に国際的に歴史ある美術展「ヴェネチア・ビエンナーレ」は、2021年に開催されるところ、コロナの影響で2022年に延期、「ドクメンタ2022」との同年開催が決定している。しかし、この日程に関しても、ヨーロッパにおけるコロナの現状を鑑み、開催予定や開催方法などについて注視していく必要がある。
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Causes of Carryover |
最も大きな理由は、インドネシアとマレーシアでの現地調査を行うことができなかったことにある。2021年度は、現地の情報を国内の関連施設などで得ることを考え、国内での調査を増やし、初年度に予定していた情報収集を加速していきたい。 令和3年度は、(1)現地調査の際に購入予定だった参考文献を各国の通販サイトを通じての購入。(2)国内で調査国(マレーシア、ミャンマー、ベトナム、フィリピンなど)の現代美術に関する文献のリサーチと購入を行なう。 当初の予定にはなかったが、各国の在日大使館、国際交流基金などでの文献調査を7月以降に追加する。そのため、海外渡航費の一部を国内移動費に切り替えたいと考えている。
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