2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K12904
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 大士 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(PD) (20869234)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 医学映画 / 衛生映画 / 衛生啓発 / 内務省衛生局 / 文部省 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、2020年度から引き続き、政府が啓発目的に作製した衛生映画に関する分析を進めた。具体的には、20世紀初めから1940年頃までの日本でどのような衛生映画が製作されたかを明らかにしようとした。2021年5月には日本科学史学会第68回年会において、「1920-1930年代の日本における衛生映画」というタイトルで報告をおこない、これまでに得た知見をまとめた。とくに、衛生映画の製作に大きく関与したのは内務省衛生局や文部省であり、その他にも各種感染症予防団体などが関わっていたことがわかった。 さらに、この時期の衛生映画の製作・流通状況をさらに包括的に明らかにするべく、『映画検閲時報』(全40巻)に掲載された衛生映画を拾い上げる作業をおこなった。同資料は戦前の映画の包括的な検閲記録であり、数多くの衛生に関する映画が記載されている。それぞれの映画の情報はきわめて少ないものの、映画の製作者の情報が記載されており、衛生映画の製作に実際に誰が関わっていたかを明らかにすることができる。2021年度はデータをまとめる作業のみで終わってしまったので、2022年度はそのデータの分析を進める。 資料調査に関しては、感染症の流行が続いていたために学外に開いていない資料館も多く、2021年度も十分に進めることができなかった。しかし、結核予防会結核研究所図書室(東京都清瀬市)での調査をおこなうことが出来た。衛生映画の中で頻繁に題材として取り上げられたのが、当時、国民の間でとくに恐れられていた結核であった。同図書室には、日本結核予防会が発行する『人生の幸福』が所蔵されており、その資料からは結核予防のための様々な衛生映画が製作されていたことがわかった。また、同図書室には、実際の衛生映画の複製もあり、それを視聴することもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は研究発表を1件おこなったのみであったが、その発表では参加者から多くの有益なコメントやフィードバックを得ることができた。また、『映画検閲時報』に掲載された衛生映画をデータにまとめることが出来、また、国会図書館などでの資料調査を複数回おこなったことにより、論文を執筆するために必要な資料をかなりの程度集めることが出来た。そのため、2022年度は論文執筆を大いに進めることが出来ると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度はまず、2021年度中にまとめた『映画検閲時報』の衛生映画に関するデータの分析を進めていく。とくに、時期によってどれほどの数の衛生映画が製作されたか、そして、誰が実際にそういった映画を製作したかを明らかにする。また2022年5月には京都大学人文科学研究所において、衛生映画に関する報告をおこなう予定である。そこでのコメントやフィードバックを踏まえ、論文の執筆を進めていく。2022年度は最終年度となるため、政府が啓発目的に作製した衛生映画に関する論文を書き上げ、投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
感染症の拡大により、当初資料調査を予定していた資料館・図書館が学外に開いておらず、調査を遂行することができず、予定していた旅費の金額を大幅に下回ることになったため。
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