2020 Fiscal Year Research-status Report
3Dスキャンを用いた銅人形に関する研究―江戸時代医学公教育の考証と折衷を中心に
Project/Area Number |
20K12905
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
加畑 聡子 北里大学, 東洋医学総合研究所, 研究員 (20649339)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 銅人形 / 経穴学 / 考証 / 折衷 / 江戸時代 / 江戸医学館 / 山崎宗運 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、江戸時代に経穴学教材として用いられた銅人形について、3Dスキャンを活用して科学的に検証することを目的として、銅人形研究と考証学研究を主軸として調査を進めている。中でも、寛政3(1791)年に官立された幕府直轄の医学校・江戸医学館で教諭を務めた山崎宗運(1751-1834)が製作した東京国立博物館所蔵「銅人形」を、当時における考証学の特質と見られる“考証”と“折衷”が体現されていると考え、もとは一式として製作されたと推察される「人体解剖模型」と併せた調査を試みている。 初年度にあたる2020年度は、銅人形研究については、新型コロナウイルス感染症拡大状況の影響もあり、測定作業を依頼する業者の選定を行ったものの、実地調査を行うまでには至らなかった。そのため、2019年に実施した予備調査の結果を抄録発表にて公表し、「銅人形」が解剖学的知識に基づき、写実的に人体が体現される一方で、身体各部の尺寸が『霊枢』骨度篇の記載の比率と一致することを明らかにした。 考証学研究については、山崎宗運が『銅人シュ穴鍼灸図経』(宋・王惟一撰)を校正補注した『天聖銅人シュ穴鍼灸図経彙攷』(書写年不明)の内容について検証した成果を論文発表した。同書における山崎宗運による校正補注及び加筆には、古医書の記載に拘泥せず、解剖学的視点を用いて経穴位置の同定する試みが表れており、当時の経穴学における“考証”と“折衷”の態様が表れていると見なした。また、「銅人形」が制作された背景について、より詳細に理解することを目的として、当該時期における考証学派ならびにその周辺の流派によって著述された経穴図や経穴書を入手、調査し、その成果の一部を口頭発表によって公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記した通り、新型コロナウイルス感染症拡大状況の影響もあり、測定作業を依頼する業者の選定を行ったものの、実地調査を行うまでには至らなかった。また、同理由により、地方に現存する銅人形及び文献の調査は遅滞した一方で、当該時期における考証学派ならびにその周辺の流派によって著述された経穴図や経穴書を調査、検証したことは、「銅人形」制作時期の江戸医学館における考証手法の多様性についての解明に向けた着実な一歩となった。
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Strategy for Future Research Activity |
所期の「医学公教育形成期の江戸医学館における“考証”と“折衷”」の態様を明らかにすべく、、銅人形研究と考証学研究を主軸としつつ、研究全体の有機的連関に配慮して進めていきたい。感染拡大状況を踏まえ、可能な範囲で「銅人形」の実地調査を試みつつ、公開されている電子資料や購入した文献を活用した調査を併せて進めることで、挽回できるものと考えている。画像情報や文献調査により得られた知見については、口頭・論文等にて発表していく予定である。
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Causes of Carryover |
「銅人形」の3Dスキャン調査及び数値の組み合わせ確認作業を行う予定があるため、それにかかる費用を確保しておく必要があり、あえて次年度使用額を残した。
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Research Products
(6 results)