2020 Fiscal Year Research-status Report
17世紀における医学自然学雑誌の創刊に関する比較研究
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20K12908
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Research Institution | Nihon University Junior College |
Principal Investigator |
安西 なつめ 日本大学短期大学部, その他部局等, 助教 (10768576)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 医学史 / 科学史 / 解剖学 / 雑誌 / アカデミー / 17世紀 / デンマーク / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、17世紀西洋で創刊された医学自然学分野の雑誌を分析対象に、初期近代における医学の展開を、雑誌における情報の選択、共有、伝達という点に着目して解明する。 初年度にあたる本年度は、シュヴァインフルトに創設されたアカデミー(Academia Naturae Curiosorum)に関する情報を整理するとともに、同アカデミーが1670年に創刊したMiscellanea curiosa, sive ephemeridum medico-physicarum germanicarum academiae naturae curiosorum(1670-)に関する基礎データの収集と分析を重点的に進めた。同雑誌は西洋における最初の医学および自然学分野の学術雑誌であり、以降は名称を変更しながら現在も学会誌として継続している。はじめに、同雑誌の創刊から10年間(1670-1680)に刊行された10巻を対象として、報告者、タイトル、報告の主題等をデータベース化し、続いて創刊号に収録された160題の報告を分析した。分析の結果、同雑誌の創刊時には医学および自然学に関する多様な報告が周辺各国から集められ、また報告全体の30%以上が病理学的な内容だったことが明らかになった。 以上の作業から、同雑誌における創刊時の性質に加え、人々の健康に役立てるため医学の知識を集積するという雑誌の目的が確認された。これらの成果は日本医史学会の学術大会で報告したほか、一部を論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の主たる目標は、主要資料のデータベース化および周辺資料の収集であった。前者に関しては、すでに対象のデータベース化を終え、対象資料に収録された論考数の推移、主要な執筆者、論考の主題などの分析に進んだ。現在は得られたデータに基づき、次年度の学会発表の準備に着手している。また後者に関しては、北欧の歴史学関連の先行研究、16-18世紀の科学史関連の資料、各アカデミーの成立経緯と記録に関する著作などを中心に広く収集した。以上の点では研究はおおむね順調に進展していると言える。 一方、本年度は国際学会への参加および現地調査も計画していたが、これらの活動に関しては、所属機関の定める海外渡航に関する方針を受けて全て中止した。そのため、現地での情報収集・交換および現地における資料確認等の点ではやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度と同様、次年度も海外渡航は困難な状況である。そのため予定していた海外での活動は見送り、データを活用した資料の比較分析に重点を置く。現地における資料確認は課題であるが、対応策として現地図書館に一部複写を依頼する予定である。また資料の比較分析の点では、計画通り前年の分析作業を継続しつつ、Miscellanea curiosa, sive ephemeridum medico-physicarum germanicarum academiae naturae curiosorumが影響を与えたと考えられるデンマークの雑誌Acta medica et philosophica Hafniensia(1673-1680)を取り上げる。具体的には両雑誌に共通した報告を抽出し、情報の伝達経緯や報告者間のネットワークを整理して、雑誌間の影響関係や各資料の性質を明らかにする。 次年度もこれらの成果の一部を学会等で報告予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は国際学会への参加および現地資料確認のために海外旅費を計上していた。しかし、所属機関の定める海外渡航に関する方針を受け、また現状に鑑みて、海外での活動を全て中止した。このため、海外旅費に加え、現地での資料調達、複写などの研究費使用がなかった。また国内旅費も計上していたが、本年度に予定していた学術大会、シンポジウム、研究会等もすべてオンライン開催、あるいは延期または中止となった。このため、国内旅費に加え、参加費等としての研究費使用がなかった。学術大会、シンポジウム、研究会等はいずれも対面による開催可能性があったことから旅費を残していたが、最終的に次年度使用額が生じた。 次年度の使用に際しては以下を計画している。現地での資料調達、複写の代替案として、現地図書館に一部資料の画像(有料)を依頼する。また現地図書館で確認することができない古書については購入を検討する。このほか、次年度に参加予定の学術大会、シンポジウム、研究会等がオンラインで実施されることから、オンライン対応用に機器等を追加購入する。
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Research Products
(3 results)