2023 Fiscal Year Annual Research Report
Patient/family-healthcare professional relationship and ethical issues in personalized genomic medicine
Project/Area Number |
20K12909
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
高島 響子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 臨床研究センター, 臨床研究統括部 生命倫理研究室長 (10735749)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゲノム医療 / 患者遺伝情報 / 患者・家族-医療者関係 / 守秘義務 / ELSI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、網羅的遺伝子解析を伴う個別化医療時代のゲノム医療における、医師-患者・家族関係の従来からの変容またそれに伴う倫理的課題を明らかにすることを目的に、文献検討を中心とする規範研究と、実際のゲノム医療事例を用いた実証研究を行ってきた。とりわけ患者遺伝情報の家系員(家族・血縁者)との共有において生じるジレンマに着目してきた。文献調査の結果、患者遺伝情報は患者の治療にとって有益な情報かつセンシティブ情報であると同時に、患者と遺伝的背景を共有する血縁者にとっても治療や予防に有益な情報となり得るため、患者の権利に関するリスボン宣言や国内の関連学会によるガイドラインでも、血縁者への無危害や善行を理由に患者本人の同意が得られない状況でも当該血縁者が患者遺伝情報にアクセスできる権利や状況を認めているが、実際には現場の医療者にケースバイケースの対応が任されている現状が示された。そこで実際の遺伝カウンセリング事例を用いて遺伝カウンセリング担当者がジレンマを感じる状況について調査しジレンマの分析と類型化を行った。最終年度である本年度は分析を継続し、従来指摘されてきたような家系員との情報共有に対する患者の意向と家系員への善行の対立だけでなく、患者の意向と家系員への善行が一致している場合でも様々な阻害要因によってジレンマが引き起こされうることが明らかとなった。特に、患者の病状悪化や死亡により情報共有の優先順位が下がったり実現が困難になったりする場合や、家系員に共有した場合であっても家系員側に情報を受け取る準備(知識、心理面等)ができていない場合には情報が有効に活用されない状況があった。単に情報を共有すればよいのではなく、共有された情報が有効活用されるための土壌作りが重要であると示唆された。結果を国際学会で発表したところ、海外の研究者から共感のコメントや示唆に富む質問を得られた。
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