2022 Fiscal Year Annual Research Report
近世中期の芭蕉発句注釈に見る蕉風俳諧受容に関する研究
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20K12917
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
服部 温子 奈良女子大学, 大学院人間文化総合科学研究科, 博士研究員 (60790194)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 蕉風俳諧 / 芭蕉発句 / 芭蕉 / 蓼太 / 荘丹 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世中期に関東を中心に絶大な支持を集めた俳諧宗匠である蓼太が著した芭蕉発句の注釈書『芭蕉句解』と、その『芭蕉句解』を増補・訂正するかたちで蓼太の弟子である荘丹が著した注釈書『芭蕉句解参考』の分析を通して、近世期における蕉風俳諧受容の一端を明らかにすることを目的としている。
令和4年度は『芭蕉句解参考』について考察を進めた。『芭蕉句解参考』が注を施している発句は95句(うち1句は現代では同句の異形とされるため、実質は94句)である。そのうち31句が蓼太の『芭蕉句解』の注釈を増補・訂正したもの、残りの64句(実質63句)が新たに注を施したものになる。新たに加えたものは『芭蕉句解』で不足している元禄期の句が中心となる。解釈を増補・訂正したものについては、その多くが新たな典拠や考察のための資料を提供しているもので、蓼太の注釈を否定するものはあまりない。ただし、一部には蓼太の解釈を退け、独自の解釈を展開している句も見え、師である蓼太の説を無批判に受け入れているのではないことがわかる。また、全体の2/3にあたる、新たな解釈を施したものについても、安永3年(1774)に蝶夢が出版した『芭蕉翁発句集』(『芭蕉句解参考』中では「蝶夢集」と呼ばれる)や同4年(1775)に暁台が出版した『去来抄』など、『芭蕉句解』以降に公刊された関係書籍を積極的に取り入れつつ独自の解釈を施していることを明らかにできた。 『芭蕉句解参考』が刊行された文化3年(1806)には、すでに多くの芭蕉および蕉風俳諧作品の注釈書が刊行されている。令和4年度の考察では、それら同時代の解釈と比較し荘丹の注釈を位置づけるところまでには至らなかったため、今後さらに考察したうえで、学会発表を目指したい。
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