2022 Fiscal Year Research-status Report
悦田喜和雄の文学活動についての総合的研究―文学活動の地域的役割の探究に向けて
Project/Area Number |
20K12918
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
富塚 昌輝 中央大学, 文学部, 准教授 (80772772)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 悦田喜和雄 / 地域文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、徳島県を中心に活躍した作家である悦田喜和雄の文学活動を総合的に解明することを目的としている。具体的には、①悦田喜和雄の作品の調査・収集、②悦田喜和雄の直筆資料の調査、③悦田喜和雄の文学作品の分析という三つの作業を行う。 令和4年度は、地域において文学活動に携わった悦田喜和雄という作家および彼の文学作品を研究する意義について、「悦田喜和雄と文学」(2022年10月19日、於:中央大学)と題する講演会で発表した。本講演会では、これまで調査・収集してきた悦田喜和雄に関する資料を用いながら悦田文学の全体像を把握した上で、悦田文学のモチーフや地域性について考察した。そして、専業作家でもなく中央文壇誌で活躍したわけでもない作家を取り上げることで、人生や地域の中に文学活動を取り入れることの意義について考察することができるということを分かりやすく伝えた。これからの文学研究は、著名な作家を取り上げるだけではなく、日常の中における文学創作や文学活動の役割について考え、ひろく報知していくことが必要になる。令和5年度も出張授業という形式で悦田喜和雄の文学活動について発表することが予定されている。 また令和4年度は、徳島県立文学書道館に所蔵されている悦田喜和雄の佃実夫宛書簡について翻刻・注釈の作業を進めた。特に本年度は、昭和27年から昭和37年までの計79通の書簡を対象に前年度までの翻刻成果を実物に照らして確認するとともに、注釈作業を進めた。新型コロナウイルス流行の影響で現地調査ができなかった時期が続いたが、本年度は集中調査を含めて実施することができた。本成果は、徳島県立文学書道館発行の『水脈』に発表することが予定されている。 また『徳島新聞』を対象に悦田喜和雄の関連記事の調査・収集を進めた。本年度は昭和22年以降の新聞を調査し、悦田喜和雄の署名記事を2本発見することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度はこれまでの調査・収集の成果をもとに悦田喜和雄の全体像を把握し、地域文学の役割や意義を報知することができたことは、研究の進展があったと評価することができる。また、悦田喜和雄書簡の翻刻・注釈をまとめることができたことも、年次計画通りに進めることができた。 ただし、令和4年度には上記の成果を研究論文や資料紹介として発表するまでに至らなかった。また、令和4年度に実施を予定していた悦田喜和雄のご遺族の方へのインタビューについては、新型コロナウイルス流行等の事情で実施することができなかった。このように研究成果の論文発表が遅れていたり、インタビュー調査を実施することができなかった点で、研究がやや遅れていると評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題において、悦田喜和雄の資料の調査・収集や直筆資料の調査については一定程度の進展があった。ただし、それを論文化して発表するという点で遅れが生じている。そのため、令和5年度は本研究課題のまとめとして、これまでの研究成果を論文化して発表することに注力していく。悦田文学の初期から晩期にかけてのテーマについての論文と、悦田文学の地域性を「反復」をキーワードに探究していく論文の2本を発表する予定である。また、悦田喜和雄書簡の調査成果を徳島県立文学書道館発行の『水脈』に発表することも予定されている。 また、悦田喜和雄のご遺族へのインタビュー調査も可能な範囲で実施していきたい。そのことで悦田喜和雄の人生や生活について情報を収集するとともに、悦田の文学活動が家族や地域の人々にとってどのような意味を持っていたのかについても明らかにしていきたい。
|
Causes of Carryover |
本研究課題の実施期間中、特に令和2年度から令和3年度にかけては新型コロナウイルス流行の影響により、出張調査を行うことができなかった。また、外部研究機関や図書館等への調査についても制限せざるを得なかった。また、研究学会での情報収集や研究発表についても十分に行うことができなかった。以上の理由により、次年度使用額が生じた。 令和5年度は、徳島県立図書館や徳島県立文学書道館への出張調査を進めるとともに、学会等への参加も積極的に行っていく。また、新聞や雑誌の悉皆調査を行うため、マイクロフィルム資料複写や地域文学関連資料の購入も行う予定である。
|
Research Products
(1 results)