2021 Fiscal Year Research-status Report
三島由紀夫文学における思想系テクストの受容と実践に関する研究
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20K12924
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
田中 裕也 高知県立大学, 文化学部, 准教授 (30769138)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 三島由紀夫 / 生成論 / 草稿研究 / 思想と文学 / フロイト受容 / 戦後文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究について3点に分けて報告する。 1)三島由紀夫『仮面の告白』(1949年、河出書房)の生成について調査・研究を行った。2)三島由紀夫の蔵書リストから〈性〉と〈美〉に関する思想関連の書物をピックアップし、それらの書物の収集を行った。さらに三島由紀夫『金閣寺』の生成について調査・研究を行った。 1)について:三島由紀夫『仮面の告白』のプレテクスト群と『仮面の告白』との差異をまとめ、セクシャルをめぐる問題へ特化していく過程を確認した。 2)について:1)とも関連しているが『仮面の告白』にはカント以降の〈性〉と〈美〉をめぐる問題が内在している。これらを三島がどのように思想的に受容し作品化しているのか確認するために、三島の蔵書リストから関連する書物をピックアップし、収集・調査・研究を行った。3)について:三島由紀夫『金閣寺』には『仮面の告白』と共通する〈性〉と〈美〉をめぐる問題が描かれている。カントだけでなくフロイト『戦争と死の精神分析』(1932年、アルス)などを引用し、〈性〉と〈美〉の問題を扱っていることまで分かってきた。1)の『仮面の告白』の研究を深化させ、現在論文を執筆中であり、学会誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果としては、やや遅れている。その理由としては、コロナ禍で三島由紀夫文学館などの県外の研究機関に調査・研究に行くことができなかったことにある。そのために研究計画を大幅に見直さねばならない点もあった。しかしそのなかでも三島由紀夫の蔵書リストからテクスト生成との関連性を、蔵書リスト関連の書物を収集することにより、まとめることができた。そのなかで作品のなかで語られる思想の問題系が何かを理解することができた。あとは三島由紀夫文学館での原稿の調査・研究を行うことにより、総合的見地からの生成論的研究ができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、三島由紀夫文学のなかに思想系のテクストがどのように受容され、それがどのような目的をもっているかについて基礎的な調査・研究を行う。特に三島由紀夫文学館を複数回訪れ、草稿や完成稿の調査・研究をおこない、三島由紀夫文学を生成論的な観点から論じる予定である。今年度も『仮面の告白』の研究を行い、論文化する予定であり、さらに『金閣寺』の調査・研究をおこなう予定である。 それらの研究成果を論文化し、公表していく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大の影響で、当初予定していた三島由紀夫文学館や日本近代文学館での調査・研究が殆どできない状況であった。そのため研究に一部遅れが生じたのが主要因である。旅費を次年度以降の調査・研究や学会発表 への旅費として繰り越すこととなった。次年度に状況が改善されれば、今年度に行えなかった実地調査を行う予定である。
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