2022 Fiscal Year Research-status Report
三島由紀夫文学における思想系テクストの受容と実践に関する研究
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20K12924
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
田中 裕也 高知県立大学, 文化学部, 准教授 (30769138)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 三島由紀夫 / 生成論 / 草稿研究 / 思想と文学 / フロイト受容 / 戦後文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は山梨県山中湖の三島由紀夫文学館において、『金閣寺』の原稿について4日間調査・研究をおこなった。日程が限られているため3分の1程度の原稿を確認し、必要部分の翻刻と分析をおこなった。まだ全ての調査が終わっていないために次年度も調査の必要があるが、先行論文での報告以外に、新たに明らかになった部分も多い。『金閣寺』柏木の人物造形をめぐって、仏教系のテクストだけでなく、フロイトの思想を通した〈性〉と〈美〉の問題が用いられていることや、谷崎文学との関連性があることなどが見えてきた。次年度の調査によってより明確な問題点を抽出し、論文を執筆し発表する予定である。 また三島由紀夫の蔵書について、2点を購入した。戦後の三島由紀夫はフランス文学について積極的に発言しているが、フロベールについてはそれほど多くない。しかし三島はフルベールの「文体」に関する発言について、積極的に線を引き・メモをしている。これらについてもさらなる調査が必要だが、次年度に「研究ノート」等で報告する予定である。 ただし今年度も昨年度に引き続き、新型コロナウイルスの流行により、急遽出張ができないことが2度ほどあった。そのため本来は今年度で『金閣寺』の原稿の調査・研究を終える予定であったが、次年度にも引き続き調査・研究せねばならない。三島由紀夫の草稿やメモを調査・研究し、三島由紀夫文学の生成を中心とする本研究には、コロナ禍の影響が大きくあったと付け加えておきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究だが、やや遅れていると言わざるを得ない。その理由は3年間にわたる新型コロナウイルスの影響によって、三島由紀夫文学館への調査・研究に行くことができなかったことと、三島由紀夫文学の受容に関する調査ができなかったためである。三島由紀夫文学館での調査は1回につき、1週間ほどの日程が必要である。そのため大学の授業日程上、ゴールデンウィークや夏期休暇を使用せねばならないが、それらのタイミングで新型コロナウイルスの流行の波が来てしまったため、調査を急遽中止せざるをえなかった。 また学内外の役職等の業務が平日以外にも及んでしまったことと、代表者が1ヶ月体調ほど不良であったため、どうしても研究に割く時間が取れなかったことも要因の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は新型コロナウイルスが5類に移行するので、三島由紀夫文学館での調査・研究がスムーズにできる。昨年度からの調査を再開し、『仮面の告白』と『禁色』『金閣寺』に関する論文を執筆し発表する予定である。この成果によって三島由紀夫がなぜ文学作品のなかで〈性〉を扱わねばならなかったのが明らかになると考えている。
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Causes of Carryover |
昨年度は本研究で中心となる三島由紀夫文学館での調査がコロナ禍により、思った行えなかったことが、次年度使用額が生じた主たる原因である。またその原因から必要資料等何が必要になるか、不明確な部分もあったためである。 今年度は三島由紀夫文学館での調査を行うとともに、論文発表に必要な資料などを購入する予定である。翌年度の請求金額は今年度の半分程度なので、今年度の調査の続きに繰越金を使用したい。
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Research Products
(1 results)