2021 Fiscal Year Research-status Report
日本近現代文学における〈世界〉概念の変遷とその表象
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20K12925
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
坂口 周 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (20647846)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 世界文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の「今後の研究の推進方策」に関して、主要な研究成果として見込んでいる単著の書籍の出版のため、論文発表を控え、執筆に注力することを述べたが、無事に初稿を脱稿し、ほぼ予定通りの実績となった。既発表内容の論文化も含めれば、書下ろし原稿が四分の三を占める。また、執筆とは別に、依頼によるシンポジウム登壇2件、パネル発表1件を行った。また書評を1件寄稿している。発表タイトルはそれぞれ①「「世界文学」を解離する方法に向けて―比較文学の可能性?―」、②「翻訳的日本近代と純粋言語の夢―村上春樹と先行者たち―」(パネル「世界文学再考――『生まれつき翻訳』のアクチュアリティ」)、③「佐藤春夫を現在に展く:河野龍也『佐藤春夫と大正日本の感性―「物語」を超えて』を端緒に」〈第一部・第二部を中心に〉となっており、内容はいずれも「世界文学」に関する概念的な理解を深めるものである。すべて本研究課題に関連し、単著出版の際には初出情報に組み込むべき有用なものとなった。特に①と②に関しては、前者は、競合する研究方法として知られる比較文学と対照させることで、「世界文学」の学問的意義を整理した点、また、後者は、近代文学史における様式変遷に対して自国文学の「世界文学」化への欲望が大きく作用した可能性を提出した点において、本研究課題における視野の拡大と深みをもたらした。書評(ハルオ・シラネほか編著『〈作者〉とは何か: 継承・占有・共同性』)も、その作業を通して、「作者性」を考察するうえで世界的視野の比較研究の必要を再認し、「世界文学」概念を再考する機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように、進捗状況は順調である。年度中に行った発表のうち、特に昨年度から延期されていた比較文学会のシンポジウム登壇(5月)と世界文学・語圏横断ネットワーク(CLN)(9月)で行った2件の発表は、本研究課題の鍵となる「世界文学」のコンセプトに関して再考する機会となり、研究の進捗を助け、幾つかの論点に若干の軌道修正を与える役割を果たした点で有益だった。執筆成果を具体的な出版工程及び編集作業まで進めることは適わなかったが、さしたる遅れではないと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
出版関係については、脱稿した分の字数が既に30万字をオーバーしているため、英語翻訳本ための作業は一度保留し、日本語での単著出版を先行させる予定に変更する。同書出版後は、シンポジウムや学会発表等の学術的イベントへの参加を継続し、出版によって公開した研究成果に対するフィードバックを得て、今後の方針を改めて固め直す予定である。その行程で、再び英語翻訳版の出版の可能性を探る。
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Causes of Carryover |
出張予定が全てオンラインに切り替わったため旅費の支出が生じなかったこと、及び、単著の英語翻訳作業の計画を来年度以降に変更したために、人件費が生じなかったことが理由である。未使用分は、令和4年度に集中的に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)