2023 Fiscal Year Research-status Report
D.H.ロレンス文学における視点の操作と他者性の問題
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20K12953
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高畑 悠介 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (20806525)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | D.H.ロレンス / 『恋する女たち』 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度『チャタレイ夫人の恋人』について査読誌に掲載した論文(「D.H.ロレンス『チャタレイ夫人の恋人』におけるユートピアの脆さと肛門性交の描写の意味」『テクスト研究』19(2023):23-41)の観点を『恋する女』に適用した論文を査読誌に投稿し、掲載に至った(「『恋する女たち』におけるロレンスのひるみ――バーキンの特異なビジョンへの確信の欠如とその余波への小説的対処策」『テクスト研究』20(2024):3-22)。当該論文では、作者の分身としての側面を持つルパート・バーキンが作品序盤で示す理想の男女関係についての特異な哲学的ビジョンが、その後恋人であるアーシュラからの批判的働きかけを受けて事実上取り下げられている点に着目し、それを件の特異なビジョンの説得性や妥当性についての作者の確信の欠如による一種の妥協と見た上で、同作が示す不可解さの多くがこの妥協の余波に対する小説的対処策とみなし得ることを論じた。具体的には、作品後半におけるバーキンのジェラルド・クライチに対する男性としての優位の(不自然な)強調が、上述の妥協によりキャラクターとしての強度を減じることになったバーキンに対する一種の補償とみなし得ること、及び、バーキンの哲学的ビジョンが作中で他キャラクターからの批判や嘲笑、相対化を大々的に受ける本作の作りが、ロレンス文学が示すバフチン的な対話性を強調する通説による解釈とは異なり、バーキンの特異なビジョンへの読者の無理解や批判、嘲笑の機先を制する目的で設けられたものとして理解し得ることを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、一年に一つのペースでロレンスについての作品論を形にしたうえで、査読つきの学術誌に掲載することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ロレンスの他作品についてこれまでの研究の延長線上の枠組みで作品論を書く余地がないか検討したい。
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Causes of Carryover |
当初の想定よりも資料の収集に費用がかかっていないため。次年度は当初の予定よりも対象を広げて研究を展開する予定であり、そのために残額を活用したい。
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