2021 Fiscal Year Research-status Report
Wide and Long Cold War--Cultural Cold War, US Southern Exceptionalism, and Print Culture
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20K12958
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山根 亮一 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (90770032)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | The U. S. Print Culture / Cold War (Perpetual War) / William Faulkner / Lionel Trilling / Nuclear Age / Richard Wright / Eudora Welty |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度と同じくコロナ禍のためかなり調査活動は制限されたが、国際学会での研究発表や出版活動を継続することができた。 7月に行われたFaulkner and Yoknapatawpha Conferenceではm"Faulkner, Welty, Wright"というテーマで、これまでのプリンカルチャー研究の成果を示すことができた。国際的なフォークナー研究の根幹をなす本学会での発表は、とりわけアメリカ南部文学に関心を持つ世界の研究者たちとの関係構築にも寄与した。 出版活動については、前年度ライオネル・トリリングについて行った研究発表を文書化し、日本アメリカ文学会東京支部のジャーナルで審査付き論文を出版した。また、『深まりゆくアメリカ文学――源流と展開』という入門書においてフレデリック・ダグラスの章を担当し、とくに学部生向けの教材を作成することができた。 そのほか、先述のフォークナー関連の学会で関心を持っていただいたスコットランドの研究者からの招待で、グラスゴー大学主催の研究発表会に参加し、また、トリリングについての拙論に関心を持っていただいた科研費グループの招待でも研究発表を行った。 また、これまで出版が滞っていた入稿済みの論文については出版のめどが立ち、2022年度の実績となる見込みである。Faulkner and Yoknapatawpha Conferenceで行った研究発表についても、予定通りであれば二年後には論集として出版されることになっている。 ここまでの研究発表、論文により、単著の構成を練る段階にまでこぎつけた。調査活動についての制約はあるが、着実に議論を発展させることに成功している。なかでも、これまで冷戦期のプリントカルチャーに焦点をあててきたが、それが恒久戦争(Perpetual War)についての議論へと展開可能であることを確認できたのは大きな成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個人としての研究発表や論文等の出版は進めることができているが、コロナ禍により、論集二冊の出版が滞ってしまっていた。それらのうち一つは出版のめどが立ったが、もう一つについては時間がかかりそうである。 一方、エドガー・アラン・ポー学会でのシンポジウムのオーガナイザーとして、さらに新たな地平でこれまでの研究成果を発展させるための好機を得ることができた。2022年度秋に開催予定である。少しずつコロナ禍の影響も弱まり、よりしっかりとしたペースで成果を上げる見込みが立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まずは9月に開催される日本ポー学会年次大会におけるシンポジアムを成功させることを目標にする。例年通りであればその研究発表内容は学会誌において出版されるので、文書化を視野に入れながら研究を深めていく。発表後はその作業に従事することになるだろう。 この学会でのテーマは、これまで積み上げた冷戦文化論と恒久戦争論の接続である。19世紀作家のポーを通じで、アメリカという国がいかに戦争と向き合ってきたか、ポーのような作家はどのようにその絶え間ない戦争状態(彼の時代の場合は、多くのインディアン戦争などがあった)をとらえていたかを論じる今回の研究は、冷戦期、あるいは現在にまで至る反戦のアメリカ文化論を構築するための端緒となるだろう。 並行して、『批評理論を学ぶ人のために』という入門書において新歴史主義と文化唯物論の章を担当しているので、その文章を完成、出版させることになる。 年度終わりには、単著の構成をさらに練り上げ、これまでの議論を踏まえながらイントロダクションを作成する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ状況により、予定していた複数の海外出張がままならなかったため。今後の使用計画としては、論文のために必要な古書、希少本の購入(より具体的には、Perpatual War関連の図書や、1950年代前後に出版された国内外の雑誌)や、9月の学会のため、国内でのアーカイブや展示場における調査活動のために使用する。より具体的には、ポーの詩に影響を受けたとされるヨネ・ノグチ、イサム・ノグチ関連の調査を8月ごろに行う予定である。
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