2020 Fiscal Year Research-status Report
Property and Race in Faulkner and Morrison
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20K12974
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
銅堂 恵美子 福岡大学, 人文学部, 講師 (10760613)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トニ・モリスン / ウィリアム・フォークナー / 人種 / 所有 / アメリカ文学 / 共有 / 共用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、トニ・モリスンとウィリアム・フォークナーの小説に描かれる「人種」概念と「所有」概念の繋がりに着目し、両作家の提示する人種概念再考の可能性が、「共有」や「共用」を巡る所有概念の再検討と如何に結びついているのかを明らかにすることを目的とする。本年度は以下の2点に注力した。 (1)人種概念と所有概念の結びつきに関する文献調査 所有と人種の関係性を考察する批判的人種理論研究の検討に注力した。この調査により、批判的人種理論と地理学研究の繋がりを確認することができた。所有の対象となるモノや場所が如何に規定・構成されるかを考察するため、地理学、特に人種的視座に着目した地理学の文献調査を進めた。また、アメリカ文学作品に描かれる「所有」と「人種」の結びつきに関する文献を収集し、整理することができた。 (2)上記文献調査から得られた視座を基にしたトニ・モリスンの作品研究 トニ・モリスンの1981年出版『タール・ベイビー』と2008年出版『マーシー』を対象に、所有概念と人種概念のつながりについて研究を行った。本年度は、『タール・ベイビー』における「白人性」と所有権放棄の関係性に着目して分析し、論文として発表した。現在は、17世紀のアメリカ初期の時代を舞台とした作品『マーシー』に着目し、所有概念と人種概念の繋がりを分析し、研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、予定していた批判的人種理論の文献調査と、トニ・モリスンの文学作品の分析を行うとともに、以前より準備を進めていたトニ・モリスンの『タール・ベイビー』(1981)に関する論文を完成させることができた。また、文献調査によって批判的人種理論と地理学研究との繋がりを確認することができた。 初年度にはニューヨークへの文献調査を予定していたが、コロナウィルスの影響で断念せざるを得なかった。代替措置として、文献複写サービスや図書購入を行ったが、予想よりも到着に少し時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、『マーシー』(2008)と『ジャズ』(1992)に焦点を当て、アメリカ合衆国建国以前の17世紀初期の時代、及びハーレム・ルネサンス期における人種概念と所有概念の繋がりを明らかにすることを目的として研究を進めていく。2021年度には、前年度、コロナウイルスの影響で実施を断念したニューヨークでの文献調査を行う。この文献調査を基にモリスンの『マーシー』と『ジャズ』に関する研究をまとめ、学会発表や論文投稿を行う。ただし、新型コロナウイルスにより海外出張が困難となる可能性も予想される。その場合は、大学のILL(複写・貸借)サービス等で対応する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行のため、海外出張が困難となり、初年度予定していたニューヨークへの文献調査を中止せざるを得なかったため、次年度使用額が生じた。また、コロナウイルス流行のため、国内学会が全てオンラインでの実施となったため、計画していた旅費の使用がなくなった。繰越となった旅費については、2021年度の文献調査、及び国内学会出張の際に使用する予定である。
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