2022 Fiscal Year Research-status Report
The Legacies of Bloomsbury Group in Modern British Novels
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20K12975
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
岩崎 雅之 福岡大学, 人文学部, 准教授 (00706640)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | E. M. フォースター / ヴァージニア・ウルフ / モダニズム / ブルームズベリー・グループ / メタモダニズム / ポストモダニズム / バイオフィクション |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、現代作品におけるブルームズベリー・グループ全体の遺産に関する調査を行う予定であったが、たとえそれが直接的なものでなかったとしても、その継承においてヴァージニア・ウルフの果たす役割が依然として大きいことが明らかになった。例えば、ブルームズベリー・グループにおいて主要な役割を果たしたウルフの姉、ヴァネッサ・ベルの半生を綴ったVanessa and Her Sister (2014)では、ヴァネッサの架空の日記を通じ、彼女の視点から20世紀初頭のグループ内の様子が眺められるが、ウルフとヴァネッサの夫クライヴ・ベルとの関係が原因とされる姉妹間の確執を中心として、夫婦愛、家族愛が主題として扱われている。そのため、ヴァネッサ本人の人生が単独で綴られるというよりも、ウルフとの関係を通じ、ヴァネッサの人生をどのように再評価すべきかという問題提起がなされていると言える。また、1930年代のレナード・ウルフ(ヴァージニアの夫であり、ブルームズベリー・グループの構成員だったとされる)を綴ったMitz (1998) という、ウルフ夫妻が飼育していたキヌザルの視点から描かれる伝記的小説も、ヴァージニアが1933年に発表したFlushという、詩人エリザベス・バレットの飼育していたスパニエル犬の一生を主題とした作品に依拠しているため、ウルフの影響力の強さを感じさせる実験的作品となっている。もちろん、ブルームズベリー・グループの定義自体がはなはだ困難であり、構成員同士を引き離してそれぞれの功績を単独で議論することは不可能だと思われるが、今年度の調査で明らかになったことは、ヴァージニアとのかかわりを通じて他の構成員の生涯と作品が論じられる傾向が強く存在しているということである。この点をより深く考察するため、当初予定していた研究計画期間を一年延長することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
過去二年間の研究成果を考慮しながら、現代文学作品におけるブルームズベリー・グループの影響を考察したものの、同グループの遺産が、ヴァージニア・ウルフの人生と作品とのかかわりを通じて継承される傾向があり、また、予想よりもその遺産継承が多様な側面を持つことが明らかになったために、現代の文芸作品におけるグループの影響の全体像を掴むところまで研究を推進することができず、当初予定していた研究計画よりも若干の遅れが生じていると言える。ここで調査研究を終了し、対象としたグループの遺産継承に関する一般的性質を指摘しただけでは成果として報告できないため、より詳細な実態解明を包括的かつ批判的に行うべく、研究期間を一年間延長することとした。すでに研究のおおよその道筋はつけられているため、次の一年間で目標とする当該グループの現代的功績の裁定を具体的に行い、論文として発表したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ブルームズベリー・グループの作品の翻案と、構成員に関するバイオフィクションを中心に据え、継続して現代文芸作品を調査することとする。目下のところ、リットン・ストレイチーとドーラ・キャリントンの交流を描いたCarrington (1995)を調査対象とする予定である。この作品において、両者の人生がどのように映像化されているのか、またそれが、過去二年間にわたって調査してE. M. フォースターとヴァージニア・ウルフのケースと同様の傾向を有するものであるかを比較検討していく。その際に、1980年代からイギリスを中心に流行したヘリテージ映画という分野とどのような関係を取り結ぶのかも注目したいと考えている。この点に注目することで、1990年代からあらためて注目されるようになったバイオフィクションというジャンルの創作との関連も指摘することができるかもしれず、本研究において有益だと思われる新たな視点を獲得できる可能性もある。
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