2021 Fiscal Year Research-status Report
Russian Avant-Garde Prose: History, Theories, and Aesthetics of Soviet Literature in the 1920s
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20K12979
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古宮 路子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (00733023)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ロシア・アヴァンギャルド / レフ / 未来派 / モダニズム / プロレタリア文学 / ファクトの文学 / ロシア文学史 / 生成論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、1920年代のアヴァンギャルドの文学を、①詩的散文、②パロディー散文、③ファクトの文学、の3局面に即して検証するものである。プロジェクト2年目である2021年度は上記③の研究に取り組み、レフの提唱したファクトの文学の理論の成立プロセスを明らかにした。その成果として、国際論集『Russian Culture on the Crossroads of History』(Valerij Gretchko, Hye Hyun Nam, Susumu Nonaka, SooHwan Kim編、ベオグラード:Logos社、2021年)に、ロシア語論文「1920年代における復古主義とアヴァンギャルド:ファクトの文学の脱プロット散文について」(189-199頁)を掲載した。また、1920-30年代を中心に活躍しアヴァンギャルドとも関連のあるソ連の作家ユーリー・オレーシャについての博士論文をもとにした、単著『オレーシャ『羨望』草稿研究:人物造形の軌跡』(成文社、2021年)を刊行した。 さらに、本研究課題と北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターとの共催で、ロシアから、文学博物館主席研究員で20世紀前半のソ連文学の専門家であるナタリア・グローモワ氏を招聘し、オンライン講演会「1920-30年代ソ連文学の動向:ナタリア・グローモワ『「ウゼル」、詩人たち、友情と不和。1920-30年代文学生活の歴史』より」を開催した。グローモワ氏はアーカイヴ研究について多年の実績があり、講演会でも、1920-30年代というスターリン体制確立期の文学状況や作家・詩人たちの生活について、豊富な希少資料を根拠に詳細な解説をしていただいた。また、講演会では、ロシア文学研究者の中村唯史氏を京都大学から招き、グローモワ氏と対談を行っていただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の進捗状況は、世界規模で起こっているコロナウイルス感染拡大や、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻とそれに伴う経済制裁の影響で、当初の想定よりもやや遅れている。 本研究は、ロシアの様々な図書館・アーカイヴでの資料調査や海外で開催される学会への参加といった国外出張を前提とする計画に基づくものであった。しかし感染拡大を受け、勤務先大学で海外渡航を原則禁止する措置がとられる期間が長期にわたって続いていた。また、2022年2月以降は、ウクライナ戦争を受けてロシアへの渡航が危険かつ困難な状況となった。こうした状況を受け、2021年度を通じて、予定していた国外出張が実現できなかった。本研究は現地のアーカイヴでしか入手できない希少資料の分析を主眼とするものであるため、研究に支障が出ている。さらに、研究に必要な書籍等の大半は海外から購入するものであるが、経済制裁によってロシアからの個人的な輸入が不可能になり、そのことも本プロジェクトに否定的に影響している。 その一方、国内・海外を問わず、オンラインでの学会や研究会が盛んに催されるようになり、2021年度はそれらに積極的に参加した。本研究課題が共同開催したナタリア・グローモワ氏の講演会でも司会を務めた。こうした研究会のオンライン化とあわせ、資料もオンラインで取り寄せ可能なものが増えている。国内外の図書館では希少資料の電子化が一層進みつつあり、今後はその活用を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、上記①詩的散文の研究に取り組む予定である。これまでに収集してきたアーカイヴ資料や、オンラインで閲覧または取り寄せができる資料を活用する。 また、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターとの共催で、国外から関連研究者を招聘し、札幌と東京で講演を行なっていただくことを計画している。 海外渡航については、コロナ感染拡大状況や、国際政治情勢の影響を注視しつつ、可能になれば学会参加や資料収集に赴きたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染拡大とロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、予定していた出張(資料調査、学会参加)が全て取りやめになるとともに、海外から招聘する計画を立てていた専門家にも来日していただけなくなり、旅費が発生しなかったためである。 2022年度については、もっと自由な海外渡航が可能になるという見通しのもとに研究計画を立てている。本プロジェクトを開始した段階では、予算の制約のため学会参加と資料調査はそれぞれ隔年で行う予定であったが、次年度使用額を利用してともに行うように変更したい。また、海外からゲストを日本に招聘することを予定しているが、その際の謝金は本研究の資金から支出する。したがって、年間を通じ、プロジェクトが始まるにあたって見込んだ以上の旅費を要することが予想される。
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Research Products
(3 results)