2022 Fiscal Year Research-status Report
Russian Avant-Garde Prose: History, Theories, and Aesthetics of Soviet Literature in the 1920s
Project/Area Number |
20K12979
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古宮 路子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (00733023)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ロシア・アヴァンギャルド / レフ / ファクトの文学 / プロレタリア文学 / モダニズム / リアリズム / 生成論 / マルクス主義文芸批評 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、1920年代のアヴァンギャルドの文学を、①詩的散文、②パロディー散文、③ファクトの文学、の3局面に即して検証するものである。2022年度は上記②③の研究に取り組み、ソ連文学界において散文をめぐる状況がどのように進展したかを、「レフ」グループ等の活動を中心に検証した。成果として、論文「リアリズムと心理主義:1920年代文壇におけるレフとラップの闘争をめぐって」を『SLAVISTIKA』第36号で発表した。 1920年代のソ連散文文学の日本への影響についても調査し、国際学会「The Reception of East Slavic Literatures in the West and the East」で、口頭報告「Korehito Kurahara and “Proletarian Realism”: Proletarian literature in Japan in 1920s」を行った。 また、第19回日本学術振興会賞の受賞を受け、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターにて、記念講演「ソ連知識人オレーシャの苦悩:ヴォロージャ像をめぐって(『オレーシャ『羨望』草稿研究:人物造形の軌跡』より)」を行った。作家オレーシャの創作を中心に、1920年代ソ連散文をめぐる状況について考察する内容であった。 さらに、本研究課題と北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターとの共催で、イスラエルから、オレーシャ研究の世界的権威であるイリーナ・オズョールナヤ氏を招聘し、北海道大学にて講演「ユーリー・オレーシャと芸術家たちの時代:1920-40年代」を、東京大学にて講演「ユーリー・オレーシャの系譜とオデーサ時代(1902-1921年)」を、ともにハイブリッドで開催した。アヴァンギャルド文学の文脈のもとで青春期を過ごし作家となったオレーシャの生涯に迫る内容であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻とそれに伴う経済制裁によるマイナスの影響を受けつつも、おおむね順調に進展している。 本研究は、ロシアの様々な図書館・アーカイヴでの資料調査や海外で開催される学会への参加といった国外出張を前提とする計画に基づくものであった。しかし2022年2月以降は、国際情勢の悪化によってロシアへの渡航が困難となり、予定していた国外出張が実現できていない。本研究は現地のアーカイヴでしか入手できない希少資料の分析を主眼とするものであるため、研究にある程度の支障は出ている。 だが、対応として、日本国内の図書館で入手できるアーカイヴ資料を検証対象に加え、本研究のテーマである1920年代ソ連の散文が、日本文学にどのような影響を及ぼしたか、という視点を研究に導入したことにより、研究は進展をみた。また、これまでに収集の蓄積があるアーカイヴ資料を新たな角度から再検証することによって、ソ連国内の散文をめぐる状況の研究もさらに進むことが見込まれている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、上記①詩的散文の研究に取り組む予定である。ロシア未来派による詩の超意味言語が1920年代のソ連散文にどのような影響を及ぼしたかについて、アーカイヴ資料を活用して明らかにする。 海外渡航については、国際政治情勢や、コロナ感染拡大状況を注視しつつ、学会参加や資料収集に赴きたい。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大と、ロシアのウクライナ侵攻に伴う国際情勢の悪化により、予定していた海外出張を行えない期間があったため、次年度使用額が生じた。しかし、コロナ禍は終息に向かいつつあることから、翌年度は海外出張の機会が多くなることが見込まれる。助成金はその旅費に大きな部分を費やす計画である。
|
Research Products
(6 results)