2022 Fiscal Year Research-status Report
Birth of modernity, and Literature and Philosophy based on the aristocratic culture in 18th century
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20K12983
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
鈴木 球子 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 講師 (00800608)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自由思想 / 18世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は以下の3つを中心に取り組んだ。 1)自由思想についての考察:これまでは、18世紀末のlibertinage(放蕩)と貴族の関係のみを扱ってきたが、2022年度は時代をもう少し遡り、17世紀における同語の意味とその変化に注目した。Libertinageとは、「不信仰」や「自由思想」、「放蕩」等の意味を持つ語である。17~18世紀の自由思想の中でも、特に唯物論的思考の役割を重視している。しかし、libertinageは次第に「放蕩」の意味を強めていき、とりわけ革命後は貴族階級を批判する際に使用される例が多い。フランス国立図書館で、革命期の王族・貴族批判の文書を調査し、libertinage や libertinの語の使用例をいくつか入手した。こうして libertinage という語を通して、17~18世紀から革命を経て近代へと向かう時期の、思潮の変化とねじれを読み取ろうとしている。 2)自由思想のうち、とりわけ唯物論的思考の変化についての考察:古典主義時代から近代にかけて、物事は合理主義に基づいて秩序化され、時間の中で有機的に捉えられるようになっていった。当時の唯物論が人間をも含む諸物の有限性と有機性を認めていった過程について考察した。その一方で、理性や有機的な秩序が捉えられないものに対する眼差しにも注目した 3)シンポジウムを開催し、古典主義時代から近代への思潮の変化について、意見を交換する機会を持った。18世紀から20世紀までの幅広い時期を対象とした研究発表が行われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3年を予定していた研究期間のうち、最初の2年はもともと主に、貴族社会の実態に関する資料の調査を行う予定であった。具体的に言えば、革命期の政治パンフレットや旧体制についての批判文書を読み込み、そこにおける貴族の描かれ方を分析しようと考えていた。しかし、コロナ禍で海外出張が3年目の終わりまでできず、入手できる資料が大変限られてしまった。 3年目のフランス出張時に、フランス人研究者たちと、研究について意見交換する機会を持ったのだが、その際にlibertinageや libertinという語の意味が、計画作成時に想定していたよりも複雑で多義的であることを理解した。Libertinage と当時の哲学との関係や、貴族の知識人と自由思想の関係など、調べることが当初の予定よりも増えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、以下の2点を特に進めていく。 1)Libertinage, libertin といった語が何を意味していたのか、17世紀から近代にかけての辞書の用例を確認していく。ルネ・パンタールが唱えた libertinage eruditの定義を踏まえたうえで、libertinage(自由思想)と17~18世紀西欧の哲学との関係を明らかにする。 2)①貴族と自由思想の関係、②貴族の放蕩批判、の二つの方向から、貴族とlibertinage, libertinといった語の結びつきについて、さらに例を集めて、考察をする。
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Causes of Carryover |
3年を予定していた研究期間のうち、最初の2年で資料調査を行う予定であった。具体的に言えば、貴族批判とlibertinage, libertinといった語の結びつきの例を、革命期の文書から探す予定であった。しかし、コロナ禍で海外出張が3年目の終わりまでできなかったため、渡航費に充てる予定であった金額が残っている状況である。 今後の使用計画としては、日本国内で可能な範囲での資料の購入と、フランス国立図書館での資料調査に充てる予定である。図書館では、革命後の王族や貴族を批判した文書の調査を行うつもりである。
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