• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2023 Fiscal Year Research-status Report

抵抗のヒストリオグラフィー:現代ドイツ文学における歴史小説の諸相

Research Project

Project/Area Number 20K12988
Research InstitutionKeio University

Principal Investigator

粂田 文  慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 准教授 (00756736)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2025-03-31
Keywordsモノの詩学 / 博物館的語り / ヒストリオグラフィー / 群集 / ヨーロッパ文学
Outline of Annual Research Achievements

2022年度から文学的歴史叙述における想起のメーディウムとしての「Dinge(物)」について、21世紀の作家ジェニー・エルペンベックと20世紀の作家アルフレート・デーブリーンのテキストを中心に研究を進めている。2023年度は前年度の研究成果を研究発表や論文としてまとめた。概要は以下の通りである: 1)エルペンベックの家族小説や自伝的テキストにおける移動する小道具のパフォーマティブな仕掛けを分析し、小説におけるモノとそれを扱う登場人物の身振りによって読者の読みのペースを狂わせ、厄災の記憶の忘却や歴史化、個人的な経験の物語化等に抗うテキストの特徴を明らかにした。(論文発表:「歴史叙述の物語 (3) 小道具の扱い :J・エルペンベック『すべての日々の終わり』における彷徨えるモノの詩学」 )、2)デーブリーンの小説におけるモノの群れを「共振」や「発酵」というキータームを介して分析し、ワイマール共和政時代の群集をめぐる言説(非理性的な人間の群れ、共同体への憧れ etc)から逸脱するその群集表象の現代性について考察した。そして、生態系のパースペクティヴから群集を捉えるデーブリーンの群集表象が、地球上で群れるあらゆる存在物の創発的進化や自己調整力に意識を促し、その物質性と多様性を浮き彫りにすることを明らかにした。(口頭発表:「発酵する群れ、発熱するテキスト:アルフレート・デーブリーン『山 海 巨人たち』における文学的テルモグラフィー」)、3)文学テキストにおける「歴史の博物館化」「文学テキストにおける博物館的な語り」について思考を重ねており、それを補強するために独墺仏の歴史博物館やホロコースト関連の記念館に足を運び、展示方法に関する調査を行った。4)デーブリーンの歴史小説『November 1918』第一巻(共訳)の推敲作業のやり直しを終え訳原稿を出版社に再提出した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2020年度、2021年度とコロナの影響で研究が遅れていたが、在外研究(2022年度、2023年度)でだいぶ遅れを取り戻すことができた。研究期間を1年延長したので目標の達成は可能であると考えている。

Strategy for Future Research Activity

これまで文学における歴史叙述という観点から20世紀や21世紀のさまざまな作家たちのテキストを個別に読んで研究してきた。現在、そうした作家たちを文学テキストにおける「モノ」を介して結びつけられるのではないかと考えている。本研究プロジェクトの最終年度は、これまでの研究成果を踏まえて、文学的歴史叙述における抵抗の身振りとしてのモノの扱いに注目しながら、個々の作家を結びつける作業を進めて行きたい。これにより時系列や主義や流派によらない「モノ」を介したネットワークとしての文学史を編むための土台ができるだろう。本プロジェクトを順調に終えた暁には、テキストにおけるモノ・空間・ナラティブの相互関係から、モダニズムから壁崩壊後に至るまでのドイツ語圏文学におけるヒストリオグラフィーの諸相を浮かび上がらせることができれば幸いである。2024年度あるいは2025年度にドイツから研究者を招聘し関連テーマの研究会を開催したいと考えており、関係各所とコンタクトをとって企画を進めているところである。

Causes of Carryover

2020年度、2021年度と新型コロナウィルスの流行で海外渡航ができず、その分の旅費が手つかずで残り、さらに2022年度 および2023年度は長期在外研究(ベルリン)の機会があり、ドイツで文献調査をするための渡航費用を予定していたが必要とならなかった。次年度使用額は、ベルリン・フンボルト大学の研究者を日本に招聘して研究会を開催することになった場合に、打ち合わせのために渡独する際の旅費として使用したい。

  • Research Products

    (3 results)

All 2023

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 2 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Als Marmorfiguren in der Siegesallee die Geschichte gegen den Strich buersteten. Aspekte musealen Erzaehlers in Alfred Doeblins November 1918.2023

    • Author(s)
      Aya Kumeda
    • Journal Title

      Neue Beitraege zur Germanistik. 2022(Iudicium)

      Volume: 21 (1) Pages: 91 - 108

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 歴史叙述の物語 (3) 小道具の扱い -J・エルペンベック『すべての日々の終わり』における彷徨えるモノの詩学2023

    • Author(s)
      粂田 文
    • Journal Title

      慶應義塾大学日吉紀要『ドイツ語学・文学』(慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会)

      Volume: 64 Pages: 25-43

    • Open Access
  • [Presentation] 発酵する群れ、発熱するテキスト:アルフレート・デーブリーン『山 海 巨人たち』における文学的テルモグラフィー2023

    • Author(s)
      粂田 文
    • Organizer
      日本独文学会秋季研究発表会(シンポジウム「「群集」を再訪する―ただしパトスなしにー両大戦間期ドイツ語圏の文学における群集表象の再検討」)

URL: 

Published: 2024-12-25  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi