2020 Fiscal Year Research-status Report
ロシア文学における多様なセクシュアリティ――20世紀初頭の大衆小説を中心に
Project/Area Number |
20K12990
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Research Institution | Toho Gakuen School of Music |
Principal Investigator |
安野 直 桐朋学園大学, 音楽学部, 講師 (10866958)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アナスタシヤ・ヴェルビツカヤ / セクシュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、20世紀初頭のロシアにおける大衆小説にあらわれる同性愛や両性具有、性役割の反転した人物形象といったセクシュアリティがどのように構築され、人々のあいだに広まっていったのかを明らかにすることであった。そこで本年度は、①革命前の20世紀ロシアのジェンダーやフェミニズムをめぐる状況調査、②具体的作品の読解をおこなった。 ①のロシアのジェンダーをめぐる状況の調査においては、文献調査を主軸とし19世紀後半から 20世紀初頭の人口統計や、作家、思想家、活動家らの著作を精査した。その結果、西欧においた勃興したフェミニズム運動が、まず男性知識人たちによって受容され広められたのち、19世紀末ごろには女性の運動家によって実践され、組織化されていったことが判明した。また同時に革命前のこの時期には、男性を公的領域に、女性を私的領域に割りあてる西欧都市型のジェンダー分業体制が確立されつつあったことがわかった。 ②の作品読解については、アナスタシヤ・ヴェルビツカヤの作品『幸福の鍵』を扱い、当時の文化的コンテクストを参照しつつ、読み解いた。本作品に描かれる主人公の女性は、多くの男性と恋愛し、結婚を拒む当時の性規範からは逸脱した人物であった。これまでの先行研究は、彼女が最終的に自殺してしまう結末を「フェミニズムの挫折」としてし解釈してきたが、じつはその死が生殖=再生産を要請する異性愛秩序と鋭く対立する要素を含んでいることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、上記のようにロシア文学におけるセクシュアリティのあり方を明らかにする上での基礎的研究をおこない、一定の成果をあげることができた。新型コロナウィルスの影響により、予定していた海外出張が叶わなかったため、ウィルス収束後に実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ロシアの女性向け大衆小説のイギリス文学からの影響を調査し、ヨーロッパ文学というコンテクストのなかで、非規範的な性の表象がいかなる意味をもっているのかを検討する。具体的には、シャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』のロシアでの受容を起点とし、当該課題にアプローチを試みる。
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Causes of Carryover |
本年度は、予定した出張が実施できなかったため、当初予定より使用額が減少したため。
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