2021 Fiscal Year Research-status Report
Pastoral motifs and philosophy in Post-Theocritean Bucolics
Project/Area Number |
20K12992
|
Research Institution | Gihu University of Medical Science |
Principal Investigator |
柳田 直子 (小見山直子) 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 助教 (30734230)
|
Project Period (FY) |
2021-02-01 – 2025-03-31
|
Keywords | テオクリトス / 牧歌 |
Outline of Annual Research Achievements |
伝テオクリトス作品(以下、pseudo群)は、テクリトス作品(真作)から形式を模したものが多い。pseudo群で、形式上の模倣度が高い「失恋者型」(Id.20とId.28)と「歌比べ型」(Id.8とId.9)のテーマや牧歌的モチーフの使われ方を比較分析した。 牧人間ヒエラルキー(牛飼い・羊飼い・山羊飼いの順に、身分差があるとする、文学表現上の規範)が牧人の性格に及ぼす影響の度合い、異性愛の描かれ方(性交を含む愛の成就が描かれているか)、牧人に対する都会人目線のアイロニーの有無の点において、pseudo群の上記作品が確実にテオクリトス的でない部分(真作ではない証左)を持つことが分かった。特に、ヒエラルキーを軸にした比較には新しい論点が多く、この点をまとめた論文を作成中である。 テオクリトス(真作)の描く田舎は、理想化とリアリズム(都会的な皮肉を込めた笑いの対象としての田舎)の間を揺れるように、作品ごとに異なるアイロニーの度合いを見せていた。 例えば田舎的な卑しさに対して、「卑しい=目新しく面白い」という感覚と同時に「卑しい=新しい文学の象徴としての可能性」を見出していた。そのようなテオクリトスの中にあった揺らぎはpseudo作品群でさらに発展し、「田舎=アイロニーを込めたまなざしを向けられる対象」という構図を超える描写が確認できた。この点は牧歌というジャンルが、近代にいたるまで様々な芸術の形式で創られ続けたことの重要な土台であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、第2子の育児休暇が明けて、大学業務と研究に復帰できた年であったが、コロナの影響があり、家庭と大学業務のために、研究に向けられる時間が若干、圧迫された。
|
Strategy for Future Research Activity |
pseudo群に関する論文を執筆する。また、pseudo群以降、ウェルギリウスに至るまでの牧歌作家のうち、ビオンとモスキュスに関する文献収集と分析を行う。「牧歌的追悼歌」については、テオクリトス以後に大きく発展した分野のため、テオクリトス以前の伝承とテオクリトス作品中のダプニスの人物像と合わせて検証する必要がある。その他の作品は多くが恋愛詩など、その後に発展した牧歌以外の文学作品との類似点が大きいため、それら後代の作品との比較を分析の軸とする。
|
Causes of Carryover |
収集済みの文献の分析を主に行ったため。2年目に新規の文献収集を再開する予定であるため。
|