2022 Fiscal Year Research-status Report
Pastoral motifs and philosophy in Post-Theocritean Bucolics
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20K12992
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Research Institution | Gihu University of Medical Science |
Principal Investigator |
柳田 直子 (小見山直子) 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 助教 (30734230)
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Project Period (FY) |
2021-02-01 – 2025-03-31
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Keywords | 牧歌 |
Outline of Annual Research Achievements |
テオクリトス以後の牧歌的要素を含むビオン、モスコスらの作品の分析を行った。彼らの作中では、テオクリトス作品とは異なり、高貴な牛飼いと野卑な山羊飼いといった異なる種類の牧人たちの間の質的格差を描くことは重視されていない。 加えて、テオクリトスの「現実感」を醸す田舎っぽい臭いや騒々しさも薄れてしまい、詩の調子はあまり喜劇的でも皮肉でもなくなっている。この傾向は伝テオクリトス作品にも当てはまるが、ビオンとモスコスではより顕著になり、多くの作品がヒエラルキーとは無関係に牧人を牛飼いかその他の区別なくほぼ同質のものとして扱っている。 これらの牧歌の主題がテオクリトスのそれらと比較して、ますます多様化していることを考慮すると、牧歌的詩論の表明とヒエラルキーの使用の関係性は以下のように分析できる。すなわち、『ビオン追悼歌』においてはヒエラルキーはよく機能して「牧歌は新しい叙事詩である」という作者の牧歌的詩論の展開を助けている。すなわちビオンが牛飼いダプニスになぞらえられることで叙事詩における牧歌ジャンルの高尚文学としての存在を強く主張し、また自然と人間の共感に満ちた美しい田園風景の中に愛する者を顕彰する新しい伝統の始まりを見せていることが分かる。 後代の作品になるに従って、テオクリトス作品に見られた土臭さや皮肉は眼に見えて薄らいでいき、その経過こそが、牧歌を近代にいたるまでの絵画・音楽を含む芸術の主要テーマの一つとなりえた主因であると読み取れる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ対応に伴う大学内業務の増加と家庭の事情(R4年8月を中心に、子供の保育所の学級閉鎖、子供のコロナ感染により、勤務できない日が増加した)。
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Strategy for Future Research Activity |
pseudo群、ビオンとモスキュスに関する研究結果をまとめた論文を執筆する。それらの作品中の要素から、ウェルギリウスに繋がる点、繋がらない点を分析する。
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Causes of Carryover |
研究の遅れと、支出のための学内手続きを間違えてしまったため、支出できなかった。
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