2021 Fiscal Year Research-status Report
使役をめぐる諸構文の意味解釈とモノの存在論に関する日独対照研究
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20K12999
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 美穂 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 講師 (40787610)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドイツ語 / 日本語 / 使役 / 構文的意味 / 語彙的意味 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、使役に関わる日独語の諸構文の対照研究により、言語間に通底する態の交替現象の原理を明らかにすることを目的とする。研究実施期間を通して、ドイツ語の使役・反使役動詞に見られる対象(モノ)の存在論に関わる意味対立―「存在の消滅」対「存在の持続」―が日本語のどのような変化動詞で認められるのかを検証し、さらに、語彙的意味が使役をめぐる諸構文の意味解釈、とりわけ構文の副次的意味の創発においてどのように作用するのかを究明する。 2021年度には、まずドイツ語の経験的データの収集と分析を行った。具体的には、状態変化動詞zerbrechen(壊す)およびoeffnen(開ける)の事例を大規模コーパスDeReKoより収集し、使役形と反使役形の頻度分析を行った。分析の結果、反使役形の出現頻度がzerbrechenでは比較的高く、oeffnenでは比較的低いということが明らかとなった。zerbrechen, oeffnenに共通して観察されたことは、自由与格の出現頻度が低いことであった。また、前年度に「日本独文学会語学ゼミナールオンライン・2020」において研究発表を行った、ドイツ語の自由与格構文、lassen使役構文、および英語のhave使役文の比較分析の成果について、研究ノートの形で公にした。さらに、2022年3月に愛媛大学において開催された研究会(「所有・所在概念の連続性とその言語化にはたらく諸条件に関する言語横断的比較対照研究」)にて、ドイツ語移動動詞を例に、与格構文の解釈メカニズムについて研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナによるオンライン授業の影響等で研究時間の十分な確保が困難であったため、研究の進捗状況が当初の予定と比べてやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツ語および日本語の使役に関わる諸構文の経験的データの検討を行い、理論面での精緻化を図る。年度の後半には、得られた研究成果を論文の形でまとめることを目指す。
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