2023 Fiscal Year Research-status Report
Typological and historical study of glottalized consonants of the Ryukyuan languages
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20K13001
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
青井 隼人 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 助教 (00807240)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 琉球諸語 / 声門化子音 / 音変化 / 音韻類型論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、通言語的に頻度が低く、その一般特性がまだ充分に明らかにされていない声門化子音(glottalized consonants)を取り上げ、その記述的・類型的・歴史的諸問題を考察する。声門化子音とは、口腔内の閉鎖(もしくは狭め)に加えて、声門での閉鎖(もしくは狭め)を伴う子音の総称である。 5つある琉球諸語のうち北琉球語群(奄美語・沖縄語)に属する言語の多くが声門化子音を有することは、琉球語学では古くからよく知られている。しかしながら言語類型論の分野ではその存在はまだ広く知られてはいない。そこで本研究では北琉球語群の言語を研究対象とし、現地調査と文献調査を組み合わせて組織的に資料を収集する。 本研究の具体的な目的は以下の3つである:(1) 現地調査に基づく声門化子音の言語音声学的記述と音韻論的解釈、(2) 文献調査に基づく声門化子音の北琉球語群内変異の類型化とその説明、(3) 北琉球語群における声門化子音の発展と衰退の妥当なシナリオの再建。 当該年度は、プロジェクトに関連する論文を1本投稿した(英語論文、当該年度末時点で掲載が確定済み)。本論文では、北琉球語群の中でももっとも豊富に声門化子音をもつ沖縄語伊江方言を対象におこなった器械音声学的調査の結果を報告し、声門化子音をめぐる琉球諸語音声学の課題を整理しなおした。また、当該年度は、現地調査を再開させ、新たな言語資料の収集をすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に掲げた3つの目的のうち、当該年度では1つ目の目的を達成することができた。また、その過程で、2つ目・3つ目の目的の達成へと向かうための重要な示唆を得ることができた。過去3年間で充分な現地調査が叶わなかったことによる遅れを取り戻すまでには至らなかったが、当初の目標であった声門化子音の内的類型化および歴史的再建を達成する見通しを立てることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
伊江方言の調査報告を踏まえ、文献調査に基づく通方言比較を主におこなう。とくに当該論文で指摘した以下の2つの問題について、比較・検討する。すなわち、(1) 声門化子音が発展したプロセスとメカニズムはどのようか。とくに声門化阻害音については、通言語的に見て珍しいプロセスである可能性がある;(2) 声門化阻害音と声門化共鳴音とのあいだに共時的なふるまいの差が認められるか。あるとすればそれはどのような差か。そしてその差はどのように説明することができるか。文献調査の結果は、北琉球語群の声門化子音の類型化のための調査票という形での公開を目指す。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、年度前半でのフィールド調査を計画していたが、その実施が叶わなかった。年度後半に1度調査に赴くことができたが、予算を使い切るには至らなかった。期間の延長が認められたことにより、現地調査(琉球大学などに所蔵されている資料の閲覧などを含む)を追加で次年度におこなう予定である。
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