2022 Fiscal Year Research-status Report
A comparative study of heckling at the Diet in Japan and the Parliament in the U.K.
Project/Area Number |
20K13005
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
柳田 亮吾 実践女子大学, 文学部, 講師 (00756512)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イン/ポライトネス / やじ / 沈黙 / 政治コミュニケーション / 政治的談話 / 国会 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も日本の国会討論を取り上げ、やじとその応対を含むやりとりを中心にイン/ポライトネスの観点から分析を行った。 Spencer-Oatey(2005, 2008)のrapport managementの枠組みにもとづくと、相互行為はフェイス、社交性の権利、相互行為の目標の3つの観点から分析することが可能である。その枠組みを援用すると、国会におけるやじは、やじを飛ばした議員が自身の相互行為上の目標のために、やじの受け手のフェイスを侵害するとともに、社交性の権利をも侵害する行為であるということができる。国会においてやじは「議会の華」といわれることもあるように、こうしたフェイスへの侵害や社交性の権利の侵害は慣習的に許容されることもある。従って、やじという行為の適切性は、相互行為を通して常に交渉されることになる。 分析の結果、やじられた委員・議員がやじの不適正性を主張する方策として、無視する、抗議する、沈黙するなどが確認できた。特に興味深いのは沈黙するという方策である。沈黙には、沈黙させられる場合と特定の目的のためにあえて沈黙する場合がある。前者の例としては、国会討論という相互行為の規範に不慣れな者がやじに対していかに応対するべきかわからず、沈黙させられてしまう場合が挙げられる。対して、後者の例としては話す権利かつ義務をあえて放棄し、抗議の意味であえて沈黙する場合が挙げられる。この沈黙の抗議は、話すことに重きを置き、話すことあるいは話を遮ること(やじること)を権力の行使とする既存の社会言語学・語用論・談話分析の研究の前提を覆すものである。来年度はこの沈黙が日本という言語文化圏に特有のものなのか、あるいは、本研究で対照を行うイギリスにおいてもみられるのかを明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
オンライン開催となった国際学会CADAAD Conference 2022に参加し、日本の国会討論におけるやじとその応対の分析について発表を行った。 また、2023年の4月に出版された滝浦真人・椎名美智編(2023)『イン/ポライトネス―からまる善意と悪意』に「身体の政治・ジェンダー・イン/ポライトネス」と題した論文を寄稿した。加えて、山下仁・大塚生子とともに『イン/ポライトネス研究の新たな地平―批判的社会言語学の広がり』と題した論集を編集するとともに、「イン/ポライトネス研究の新たな地平を目指して」と題した論文を寄稿した。同論集は2023年に出版予定である。この研究成果の一部は、第30回情報保障研究会にて、山下仁・大塚生子と共に発表した。 上述の執筆活動に加え、コロナ禍のため海外への渡航が制限されていたこともあり、イギリス議会におけるやじとその応対の分析が遅れている。これについては、最終年度に巻き返しを図りたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に執筆した論文の一部は2023年度に開催が予定されているInternational Pragmatics Conferenceにて発表する予定である。
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Causes of Carryover |
計上している予算の大半は国際学会への参加の旅費とする予定であったが、コロナ禍のため今年度もそれが叶わなかった。次年度に開催される国際学会への参加に係る費用として 使用する計画である。
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Research Products
(3 results)