2022 Fiscal Year Research-status Report
A Conversation Analytic Study of Turn Design and Constituents of "Primary Right"
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20K13011
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
早野 薫 日本女子大学, 文学部, 准教授 (20647143)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 会話分析 / 認識性 / 発話の組み立て / 優先的権利 / 子どもをめぐる相互行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、客員研究員としてヘルシンキ大学で2022年度を過ごした。ヘルシンキ大学に所属する会話分析の専門家との研究交流や研究発表を通して、おおむね順調に研究課題を進捗させることができた。分析に際しては、以下の4点に着目した。1) 子どもについてそれぞれに語る権利を持つ保護者と保育士が大人同士で会話をする中で大人が子どもに発話をむける時、そこにはどのような構造やパターンがあるか。2) 保護者と保育士が子どもに発話を向けることは、相互行為上どのような実践として働くか。3) 保育士が、親とのやりとりにおいて日中の子どもの発話を引用する時、そこにはどのような構造やパターンがあるか。4) 保育士が子どもの発話を引用することは、相互行為上どのような実践として働くか。 1), 2)の観点からの分析の結果、保育士は、保護者との会話の中で発話を子どもにも向けることで子どもを経験について語る主体になり得るものとして扱うこと、そうすることでこれから保護者に語ろうとする出来事の性質を保護者に予示することが明らかになった。3), 4)の観点からの分析の結果、保育士が行為の主体としての子どもの権利に対する配慮を表明しながら、自分が保育者としての責務を果たしていることを主張していることが示された。 2022年度前半は、2021年度までに収集したデータの整理、文字化を完了させ、1), 2)の観点から分析を進めた。2022年度中盤は、1), 2)の分析結果を論文にまとめ、国際学術雑誌に投稿した。この論文は採択され、2023年度中に掲載されることが決まっている。2022年度後半は、当該投稿論文の改訂を進めるとともに、3), 4)の観点からデータ分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、研究代表者が研修を得ることができたこともあり、当該課題に集中して取り組むことができた。主たる研究成果が出版物として発表されるのは2023年度以降になるが、おおむね予定どおりに分析を進め、結果をまとめることはできたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、前述の分析の観点3), 4)に即した分析結果を論文にまとめて発表する。また、本研究課題のテーマである「発話デザインと優先的権利」について総括的な論考をまとめる。 データの文字化と整理はおおむね完了しているが、さらなる資料収集、整理をするにあたり、必要に応じてリサーチ・アシスタントを雇用して研究の実施を促進する。
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Causes of Carryover |
2021年度に学会出張のための旅費として計上していた額を2022年度に繰り越したが、2022年度中も世界情勢を鑑みて海外出張は実施することが適わなかったため、次年度使用額が生じた。2023年度は国際学会出席のための海外出張と、海外研究者の招聘を予定しており、そのための旅費として当該予算を使用する。
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